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静岡県内初の「義務教育学校」土肥小中一貫校 開校5年、生活 自発性や協調性養う

 改正学校教育法により2016年度に制度化された新しい校種「義務教育学校」。県内初の同学校「伊豆市立土肥小中一貫校」がことし開校5年を迎えた。旧土肥小と旧土肥中の再編によって生まれた新しい学校に、どんな変化があったのか―。
息の合った演技を披露する児童生徒=9月下旬、伊豆市立土肥小中一貫校
学習 5年から教科担任制  9月下旬の体育祭「桜翔祭体育の部」。5~9年生66人が阿波踊り、よさこいソーラン、体をたたいてリズムを刻む「ボディースラップ」を15分間にわたり披露した。背丈もあどけなさもさまざまな児童生徒が、息を合わせてやり遂げた。
 同校は18年4月、子ども一人一人を長期的視点で教育する施設一体型の学校として誕生した。旧土肥中を改修した3階建ての校舎に現在、1~9年生計112人が通う。
 義務教育学校の特徴の一つは、従来の小学校(6年間)・中学校(3年間)の枠組みに縛られない学年段階の区分。中学進学に伴う環境の変化からいじめや不登校が増える「中1ギャップ」解消を狙い、同校は義務教育9年間を初等部(1~4年)、中等部(5~7年)、高等部(8~9年)の三つに区分。キャンプや遠足はこの区分ごと行う。体育祭の競技をはじめ、区分を超えた異学年混成グループでの活動も盛んだ。
小中連携教育
 鈴木昭則校長はこれらの効果について「子どもたちがリーダーとフォロワーの両方を経験する機会が多く、自発性や協調性が養われている」と分析。身近な上級生に憧れながら少しずつ成長できるため「中1ギャップ」のような環境急変による子どもの混乱も起きにくいと説明する。
 一人の校長の下、一つの教職員組織で学校運営する点も特徴だ。教員同士の「乗り入れ授業」が導入しやすく、同校では教科の専門性の高い中高等部の教諭が初等部の授業に週に数回入る。
 また、一般的には中学生から始まることが多い教科担任制、50分授業、単元テストに加えた期末テストの実施などの仕組みを、同校は5年生から導入している。子どもの授業中の発表が増えて授業が深まるほか、学力試験の点数も年々上昇傾向だという。
 少子化が進む伊豆地域。鈴木校長は「地域の核となる“選ばれる学校”であり続けたい」と語る。今後の重点目標を学力向上とし、教員研修に一層力を注ぐ方針だ。
 
小中連携に多様な形態  改正学校教育法により2016年度に制度化された義務教育学校。県内では来年度、川根本町に2校が開設予定だ。
 本年度の学校基本調査(速報)によると、全国に207校ある。9年間を見通した教育の重要性のほか、小中学校として使用していた複数の施設を一つに統合することも可能な点も増加要因とみられる。
 小学校から中学校への円滑な接続を目指して近年、両校の教員が情報交換や交流を行う「小中連携教育」が広がっている。このうち、小中学校が目指す子ども像を共有して9年間を通じた教育課程を編成するのが「小中一貫教育」だ。
 小中一貫教育の一つの形態が義務教育学校。一人の校長の下に一つの教職員組織が置かれる。当面の間は例外も可とされているが、教員は原則として小中両方の免許が必要だ。
 もう一つが「小中一貫型小学校・中学校」。組織として独立した小中学校があり、校長や教職員組織がそれぞれに配置される。教員は小中いずれかの免許を持てば良い。ただ県内には、柔軟な学校段階の区切りなど義務教育学校の特徴を持つ小中一貫型小学校・中学校もある。  
(教育文化部・鈴木美晴)

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