テーマ : 伊豆市

時論(11月26日)「中央日本」縦ラインに目を

 身近なだけに、食べ物の東西比較は興味深い。ウナギの調理しかり、雑煮しかり。そば・うどんの「きつね」「たぬき」はややこしく、大阪で「きつね」を注文するときつねうどんが出てくるから、きつねそばが食べたければ「たぬき」と頼むそうだ。揚げ玉を載せるのは「ハイカラ」。
 同じメーカーのカップそば・うどんも、東と西で粉末スープの味付けが違うと聞いたこともある。
 静岡、山梨、長野、新潟の知事が集まった「中央日本4県サミット」で、川勝平太知事がそばで連携しようと提案した。生産量全国2位、人口10万人当たりのそば店数が1位とされる長野県を差し置いてというのは杞憂[きゆう]のようだ。
 土肥金山(伊豆市)と佐渡金山を両端とする新機軸の観光ルート「黄金KAIDO[かいどう]」に、「食」で肉付けする企画だという。かつお節、サクラエビかき揚げ、日本酒、ワサビと、そばを引き立てる静岡名物は多く、成果に注目したい。
 ソバ栽培は稲作より早く伝わり、救荒作物でもあった。細く切った「そば切り」の画期的発明は信州説と甲州説がある。江戸時代にそば打ちの技術やつゆが進化。多くのうんちく本が東京中心に書かれている中、今後、耳慣れない「中央日本」「山の洲[くに]」は認知度と存在感を高められるだろうか。
 昔、東海道の宿場町が栄え、今は新幹線、東名・新東名が通る本県。東西の横ラインで振興策を論じてきた。遠州と信州を結んだ「塩の道」や富士川舟運など縦ラインの人とモノの行き来を語る場は限られていたようだ。中部横断自動車道の往来が、山に、その向こうに目を向けるきっかけになればと思う。食の違いと併せ、共通点を探してみてもいい。
(論説副委員長 佐藤学)

いい茶0

伊豆市の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞