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現代の名工に静岡県内4人 障害者対象の部門新設

 厚生労働省は10日、工業や建築、調理など各分野で卓越した技能を持つ150人を、2023年度の「現代の名工」に選んだと発表した。13日に東京都内のホテルで表彰式を行う。1967年度から始まり、今回が57回目。表彰者は本年度を含め7096人となった。
 静岡県内関係者は4人が選ばれた。
 本年度から障害のある技能者を対象とした部門を創設。幼少期に視力を失いながらも、視覚障害者が音声の補助でパソコンを使えるソフトウエアを開発した、石川県の斎藤正夫さん(75)らを選出した。
 そのほか、放射線遮蔽(しゃへい)装置を製造した溶接技術者で、福島第1原発事故の廃炉作業に貢献した茨城県の小泉英雄さん(82)や、高い洋裁技術でオーダーメード服作りを半世紀にわたって指導してきた神奈川県の合田睦子さん(77)らを選んだ。
 表彰制度の目的は技術者の地位や技能向上を図り、優れた技を次世代に継承すること。150人は都道府県や業界団体が推薦した人の中から決めた。

 落ちない工法徹底 かわらふき工/海野克己さん
海野克己さん  大学を卒業してから48年間、屋根ふき工の職人の道を歩んできた。先代の父の思を引き継ぎ、瓦が「絶対に落ちない、落とさない」工法を徹底する。「後世に残るような仕事。手を抜かずに、周囲との信頼関係と地道に努力する姿勢が何よりも大事」と言い切る。
 人付き合いが希薄で、地場の大工や工務店が少なくなっている中、後継者不足に危機感を持つ。「何とか次の世代に業界を残していくことが使命。一つ一つ自分が持っている技術と人脈を伝えていきたい」。生涯現役を掲げ、後進育成にまい進する。
 (70歳、藤枝市)

 精緻な技、信頼厚く 紳士服仕立職/滝こと代さん
滝こと代さん  仮縫いから手直しを出さない精緻な技が信条。男性が多い業界で、さまざまな困難を克服してきた。
 男手一つで育ててくれた父にミシンをせがみ、洋裁学校から紳士服の道へ。「父の背広を見てほどいて、何着もつぶした。自由にさせてくれて感謝」。都内で下積みを重ね、地元に店を構えた。信頼に応える仕上げに遠方の客も多い。
 交通事故で左腕に障害を抱えたが、国際アビリンピックでは洋服・紳士服種目で銅メダルに輝いた。「働くしかないから続けられた。気持ちを強く持てばできないことなんかないね」
 (81歳、富士市)

 頑丈な足場3000件超 建築とび工/小山賢治さん
小山賢治さん  鉄道補修の足場建設を中心に手がける「小山組」の創業者で、建築とび工として53年のキャリアを誇る。
 危険と隣り合わせの高所作業で重要なのは、安心安全の足場づくり。「長年の経験が頼り」と、足場で使うパイプは2本に束ね強度を高めるなど知恵を絞る。浜松特有の強風などに耐えられる頑丈な足場の建設を3千件以上担当してきた。
 19年にわたり作業主任者の実技講師として後継者育成に貢献し、今も技能検定委員として活動する。「体が持つ間は頑張りたい」と技術継承や現場の安全確保に今後も力を注ぐ。
 (74歳、浜松市南区)

 手描きの魂つなぐ 広告美術工/藤田一さん
藤田一さん  看板製作と住宅塗装を手がける会社の2代目として40年以上、地域の信頼に応え続けてきた。
 10月に88歳で亡くなった父忠次さんの姿を見て育った。子どもの頃から看板の取り付け作業などを手伝い、面白さを感じて「後を継ぐ」と決めていた。塗装や文字、絵を描く技術は全て父を見て学んだ。
 業界が手作業の時代からIT化に移行する中でも、「文字や絵を描く技能を途絶えさせてはならない。昭和の看板屋の思いをつないでいきたい」。父から受け継いだ職人魂は決して揺るがない。
 (60歳、藤枝市)

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