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テーマ : 富士市

若者転出「働きがいを」 推計379万人→353万人【静岡県知事選 静岡の現在地②人口減少】

 「県内に進路として魅力的な大学や企業が少ないと感じている学生が多い。大学がもっと“とがった”研究拠点をつくったり、企業が社員の働きがいを高めたりしないと、若者は県外へ出て行ってしまう」。静岡市葵区で学生の就職支援を手がける「ジョブエール」の松本保美社長(60)は顔を曇らせる。

ふるさとの狩野川を眺める中沢慶太さん。休日には帰省してリフレッシュすることもあるという=4月下旬、沼津市
ふるさとの狩野川を眺める中沢慶太さん。休日には帰省してリフレッシュすることもあるという=4月下旬、沼津市

 2009年7月時点で379万495人だった本県の推計人口は、24年4月時点では353万3214人まで減少。わずか15年で県内3番目の富士市の人口(約24万7千人)を超える人数が消えた計算になる。
 県総合政策課によると、少子・高齢化によって出生数から死亡数を引いた「自然減」に拍車がかかっているのに加え、人口が県外へ流出する「社会減」も生じている。特に進学や就職を機に本県を離れるケースが多い10~20代の若い世代は年間約6千人の「転出超過」。男女別では女性の流出が目立つという。
 県内の大学を出て県外で就職した若者の本音はさまざまだ。東京都の人材サービス会社に勤務する中沢慶太さん(27)=沼津市出身=は県内企業も視野に就職活動したが、仕事内容などを踏まえて今の会社を選んだ。ただ、故郷への愛着はあり「リモートワークなどで東京と変わらない環境が実現できるなら、静岡で暮らしてもいい」と語る。
 都内のIT系企業で働く田中真愛さん(26)=藤枝市出身=も、職場環境重視で就職先を決めた。「東京は便利で何でもあるし、生活は充実している。ただ、家庭を持ったりした場合、子育て支援などで静岡が暮らしやすければ、Uターンを考える人は多いのでは」と思いを巡らす。
 県は人口減対策として若者・女性の県内就業の拡大、移住者の呼び込み、子育てと仕事の両立推進を重点に位置づける。県と市町の移住相談窓口や支援施策を利用して県外から移住した人は22年度に2634人。成果は出始めているが、人口減に歯止めをかけるには至っていない。
 静岡大の教員で組織し、県内高校生の意識調査などに取り組む「人口動態と就労環境研究所」の荻野達史教授(人文社会科学部)は首都圏に近く進学や就職の選択肢で見劣りする本県は「地域として基礎的な生活条件を含めどれだけ魅力的であるかが問われる」と指摘。宇賀田栄次教授(学生支援センター)は「対策の中核は仕事」として、「官民で雇用の創出や人材の専門性向上、多様な働き方の導入を進め、定住、関係人口の増加につなげるべき」と訴える。
 (生活報道部・草茅出)

 <メモ>ここ数年県内の高校を卒業する生徒の半数以上に当たる約1万7000人が大学に進学している。県内の大学の定員は1学年約8500人。県内からの入学者は約5000人で、1万2000人が県外に流出する。Uターン就職で県内に戻るのは毎年約3000人にとどまる。

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