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テーマ : 川根本町

社説(12月2日)「風流踊」遺産登録 地域文化伝承の弾みに

 静岡県の「徳山の盆踊」(川根本町)や「有東木の盆踊」(静岡市葵区)など全国各地に伝わる民俗芸能「風流踊[ふりゅうおどり]」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることが決まった。各地の民俗芸能は過疎化による担い手不足など、厳しい状況にある。登録を地域文化伝承の弾みにしたい。
 登録された風流踊は「郡上踊[ぐじょうおどり]」(岐阜県)や「西馬音内[にしもない]の盆踊」(秋田県)など、本県の2件を含む24都府県の41件。ユネスコの評価機関が「地域の対話と交流を促す」「文化の多様性を示す」などとして登録を勧告していた。
 無形文化遺産にはこれまで、日本から歌舞伎や能楽、和食など22件が登録され、風流踊もこれらと肩を並べることになった。継承に努めてきた人たちの大きな励みとなろう。
 風流には華やかな、人目を引くという意味があり、風流踊は先祖供養の盆踊りや豊作祈願の行事などとして伝承されてきた。鮮やかな衣装や道具を身に着け、笛や太鼓をにぎやかに鳴らして踊るといった共通の特徴があり、41件はいずれも国の重要無形民俗文化財に指定されている。
 徳山の盆踊は400年以上の伝統があり、作物を荒らす獣を追い払い、豊作を祈願したのが始まりとされる「鹿ん舞」、少女が踊る「ヒーヤイ」、「狂言」を交互に披露する。有東木の盆踊は中世から近世初期に流行した歌と古風な踊りを、盆踊りとして継承してきた。踊りは男女で区別され、太鼓や飾り灯籠を用いる。
 登録は、より多くの人に知ってもらうチャンスだ。発表の場を増やすとともに由来などもしっかり説明し、関心の高まりを新たな担い手となる若者の確保につなげたい。地域性豊かな民俗芸能は、日本の魅力として重要な観光資源になり得る。連携で発信力を高め、海外にもアピールするべきだ。
 有東木の盆踊が今年も3年連続で中止になったり、徳山の盆踊が規模を縮小したりするなど、各地の民俗芸能はコロナ禍の大きな影響を受けている。ネットでの発信など再開や保存継承のノウハウ共有をさらに進めてほしい。
 民俗芸能は人々の心のよりどころとして、地域コミュニティーの維持や再生に大きな役割を果たしてきた。各地の保存会などは、地元小中学生への指導など地道な努力を続けている。だが、小さな集落の小規模な行事も多く、伝承は年々難しくなっている。
 国や自治体は実情把握に努め、企業や民間団体などと連携しながら支援態勢を構築してほしい。地域の宝を途絶えさせてはならない。

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