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テーマ : 川根本町

社説(9月13日)茶の品評会 審査技術継承も着実に

 第76回全国茶品評会(全品)が8月下旬、京都府宇治市で開かれた。8部門のうち静岡県からの出品茶は普通煎茶4キロの部で相藤園(川根本町)、深蒸し煎茶の部で山東茶業組合(掛川市)が最高賞の農林水産大臣賞に輝いた。
 全国で広く生産される普通煎茶は、4キロの部と、生産実態に即して機械摘採に限定した10キロの部がある。本県で昭和30年代に開発された深蒸し煎茶は、いわばお家芸の部門。受賞上位3点の得点合計を市町村別で競う産地賞を3年連続で掛川市が受賞した。
 今回も、県が掲げる「茶の都しずおか」にふさわしい成績を収めたことを喜びたい。受賞は生産者の励みになると同時に、産地の声価を高める。持続可能な「茶の都」のためには、高い生産技術を維持するとともに、茶の品質を厳格に評価し信頼される品評会を実施できる審査技術も着実に継承していかなければならない。
 生産者も客観性を重視し、市場を意識して審査技術に関心を高めてほしい。一番茶、二番茶の生産・流通が夏に一段落すると、茶業界では共進会、互評会などと称して産地やブロックで大小の品評会が行われる。現場の切磋琢磨[せっさたくま]を奨励し、向上心を刺激することは重要な茶業振興策と言える。
 13日には、全品出品茶の入札販売会が行われる。茶価低迷が続く一方、新型コロナ下で急須で入れるリーフ茶が見直される中、最高水準の茶がどう評価されるか注目される。
 昨年、普通煎茶10キロの部の平均落札価格は1キロ当たり1万6764円。JA静岡経済連によると、県内産一番茶の平均価格は2085円だった。
 生活様式の変化やドリンク茶台頭などで、茶業界は苦境が続いている。低価格志向が強まる中、県が「農芸品」と呼ぶ上級茶の生産製造技術を維持するには相応の戦略が必要だ。需要は限定的でも、品質面で消費者満足度の高い茶づくりは静岡茶の生命線である。
 県は2016年、児童生徒静岡茶愛飲条例を制定した。狙い通りにお茶好きの子が増えているか検証が必要だ。その上で、お茶の多様性に関心を持つ未来のお茶ファン育成に進みたい。
 最近、各地で開催される小学生向けイベント「T―1グランプリ」は07年に宮崎県の若手茶業者3人が発案した。クイズ、茶の入れ方、種類当てで構成されるが、子供たちが受け身ではなく、意欲的に参加できるように工夫されている。
 茶業者に限らない。「いいお茶」を目利きする楽しさを知る消費者が増えれば、日本茶業の持続可能性は高まる。

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