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テーマ : 川根本町

多文化共生促進へ 静岡県、川根本町で実験 人材確保の一助に期待【解説・主張しずおか】

 静岡県は本年度から多文化共生の地域づくりに向け、川根本町で実証実験に取り組んでいる。同町の企業が参加し、外国人と日本人の町民が交流するイベントを昨年10~12月に開催した。まずは町内で働く外国人の声に耳を傾け、住みやすい環境のニーズを探る。国内外の外国人から、第二の故郷として選ばれるような地域を県全体で目指したい考えだ。

在住外国人と日本人の町民が交流を深めたクリケットの体験会=2022年10月、川根本町
在住外国人と日本人の町民が交流を深めたクリケットの体験会=2022年10月、川根本町

 県が事業の委託先を募り、同町で経営コンサル事業などを担う「KAWANEホールディングス」が名乗りを上げた。同社の迫洋一郎代表取締役は「国籍にとらわれず、主体的に交流が生まれる関係が必要だ」と考え、さまざまな交流イベントを展開した。
 町の人口は約6100人。近年は外資系企業のサテライトオフィス進出や移住により、アジアを中心に13カ国約80人が暮らす。インドや中国、フィリピン、ネパール国籍の人材を雇用する4社の協力で、小学校での交流授業や、インドで人気のクリケット体験などを開催。4社から30人ほどが参加した。
 参加した外国人からは「日本語が上達し、生活向上が見込める」などと継続を希望する声が上がった。これまで交流の機会が少なかった町民からは「言葉が通じず対話が難しかった」と率直な感想の一方で「外国人住民と話しやすい場を今後も設けてほしい」と前向きな意見も聞かれた。
 県や同社はこうした声や他市町の先進事例を参考に、必要な施策を取り入れた受け入れ促進計画を本年度中に策定する方針だ。10年スパンで実行に移す。言語の壁が浮き彫りとなり、施策には外国人向けの日本語教室や外国人住民が教える英会話教室などがアイデアに上がっている。
 新型コロナウイルス禍で働き方が多様化し、地方への移住が注目される中、外国人の定着を図るには受け入れる地域側の体制づくりが欠かせない。移住者の相談窓口を担い、同町で活躍する移住コーディネーターのように、外国人住民の相談や町民との間を取り持つような人材の設置、育成なども前向きに検討してみてほしい。
 日本の将来推計人口(2017年推計)によると、45年の本県人口は20年比で約67万人減少するとされる。さらに在留資格を持つ外国人材は首都圏に集中し、地方の人材確保が課題だ。同町が在住外国人の少ない地域の参考事例となり、経済成長の鍵を握る人材確保の一助になることを期待したい。

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