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テーマ : 川根本町

川根本町の学校再編 町民と丁寧な対話を【記者コラム黒潮】

 川根本町内の小中学校6校のあり方を見直す同町の学校再編計画は、4月の新小学校開校を皮切りに、来春には小学校から中学校までの教育を一貫して行う義務教育学校2校を開設する。再編計画は途中で必要な予算が議会で認められないなどの曲折があった。円滑な計画の推進には、今後も町民との丁寧な対話が求められる。
 町は少子化に伴う小規模校の増加に不安を抱く保護者の声を踏まえ、再編を軸に協議を重ねた。南北に長い町の地形、通学距離などを考慮し、中学校区を維持したまま北部と南部にそれぞれ9年制の義務教育学校を配置する方針を2020年に決定。両校は既存の校舎を改修して開校する計画だ。
 20年に10回、住民説明会を各地で開き、参加者に実施したアンケートでも前向きな意見が約7割に上った。翌年には2校設置案を前提に、校舎改修の設計業務委託費を盛り込んだ予算が可決。だが、改修が始まる22年に入り、一部地域の住民から「説明が不十分」と再度、説明の場を求める声が上がった。
 当初の住民説明会では地域の合意が十分に得られていなかったと言えるだろう。その後も住民との意見交換の場を十分に設けずに計画を進めてしまった部分があり、町の担当者は「計画の方針をこまめに共有する姿勢が薄れていた」と反省を口にする。
 こうした経緯から22年の町議会3月定例会では、行政側が予算計上した再編事業費約5億円を全額削除する議員発議の修正動議が可決され、春からの校舎改修が白紙になった。
 見直しに賛成の町議は「多額な予算」「人口減で今後1校に統合するのが現実的」として2校設置案を見直すべきと主張した。
 一方で、保護者からは「児童生徒の通学距離を考慮した上での再編案だったのに」「子どもを第一に考えてほしかった」などと残念がる声が聞かれた。一部町議が提出した修正動議の提出理由は、必ずしも保護者の声と一致していたとは言えず、民意との距離感を感じさせた。
 町内の小中学校再編案はその後、議会全員協議会などで慎重に議論を続け、2校設置案を前提に経費を抑える方向で落ち着いたが、町民に戸惑いや不安を抱かせてしまったのは事実だ。行政も議会も町民と対話を重ね、距離を縮める作業が足りなかった。これまでの経緯をあらためて振り返り、今後の運営に生かしてほしい。
 (島田支局・池田悠太郎)

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