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テーマ : 川根本町

孤立の山間地、空から支援 ヘリ離着は地元協力が鍵【防災 連携の力②】

 首都圏からの観光客も多く集まる川根本町の寸又峡温泉。2021年6月、温泉街から約1キロの県道で土砂崩れが発生し、宿泊客や住民約70人が孤立状態となった。地元大間区の安竹賢治区長(64)はインターネット電話を使った緊急放送で住民に状況を知らせつつ「病人やけが人が出たら…」と不安の中で一夜を過ごした。幸い翌日には土砂が撤去され観光客が帰宅できたが、完全復旧までは約3カ月を要した。

寸又峡温泉近くに整備されたヘリポート。救急搬送などで活用され、住民の命綱となっている=8月、川根本町千頭
寸又峡温泉近くに整備されたヘリポート。救急搬送などで活用され、住民の命綱となっている=8月、川根本町千頭

 大間区のように災害時に孤立する可能性のある集落では、ヘリコプターを使った救助や物資輸送が命綱となる。04年の新潟県中越地震を機に全国で対策が進み、静岡県内でも集落の約4割がヘリの離着陸スペースを確保している。大間区にも04年にヘリポートが整備され、主に救急搬送で“空のアクセス”のメリットが生かされてきた。安竹区長は「住民の大きな安心材料になっている」と話す。
 一方、実災害でヘリが活用された事例は少ない。受け入れ時は警戒員の配置や誘導員の手旗による合図が必要で、4日の県総合防災訓練では町内5カ所で行うヘリを使った訓練に住民が参加する。同町自治防災室の担当者は「職員を派遣できないことも想定し、情報共有を含めて経験値を高めておくことが大切」と強調する。同町を管轄する静岡市消防局は「安全性の観点から着陸状態での活動が理想」とするが、山間地はホバリング(空中静止)で活動する場所の確保にとどまる集落が多いのもネックだ。新たな着陸場の造成には地元の協力が不可欠で、同消防局は各署と連携した住民参加型の訓練に定期的に取り組む。
 11年、台風15号の影響で孤立した静岡市清水区由比入山の2集落では、食料や燃料が不足し、消防ヘリで物資約400キロを輸送した。由比入山自治会の石切山誠会長(68)は「停電もあった中で住民の結束力が試された。近年のゲリラ豪雨を考えれば、また地区内で孤立が起こってもおかしくない」と危機感を口にする。同自治会では定期的な防災訓練に加え、11人の地区長が道路周辺の危険箇所をチェックし、早期の修繕や復旧につなげる体制づくりに力を入れる。

 <メモ>県危機対策課によると、道路の寸断などで孤立する可能性がある農業・漁業集落は県内で383カ所(2月時点)。衛星携帯電話や防災行政無線など通信手段の整備は97%で完了している。ヘリコプターの離着陸スペースは151カ所。未整備の集落は山間部で適地がないケースも多く、つり上げ装置を使う活動スペースを226カ所に確保している。

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