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大自在(9月14日)罪なき小さな命

 安倍晋三元首相の「国葬」の賛否や旧統一教会との関係に政権与党が揺れている。銃撃現場には追悼モニュメント設営が検討され、汚職事件で捜査中の東京五輪を巡っては大会組織委員会を率いた森喜朗元首相の胸像を建てる動きもあると聞く。
 なぜモニュメントなのだろう。現役中にいくら批判や疑惑にまみれようと、歴史の審判に先手を打って自分や仲間を偉人化しておきたいのか。牧之原市の認定こども園で送迎バスに5時間も取り残された3歳の女児が亡くなったのは、そんな話題が世間を騒がせているさなかだった。
 事件は園側の過失というだけで終わらせてはなるまい。当事者の園はもとより、全国の保育園や幼稚園の労働環境はどうか。教諭や保育士の報酬や負担は適切か。経営陣におごりはないか。1年前にも福岡県で起きたばかりの悲劇。再発防止には政治家も腰を据えた抜本的な対策が不可欠だろう。
 牧之原市の現場には、女児に渇きを癒やしてほしいと、ペットボトルやジュースが多数供えられていた。3歳では開けるのが大変だろうと、ふたを緩めたり、ストローを差してあげたりした状態で-。誰もが女児を心から悼んでいた。
 ロックバンド「ザ・ブルーハーツ」の名曲「トレイン・トレイン」の歌詞にこうある。〈世界中に建てられてる どんな記念碑なんかより あなたが生きている今日は どんなに意味があるだろう〉。
 政治家が明け暮れる政争や自己賛美の陰で、罪なき小さな命が失われた。国民無視の政治などもういらない。

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