テーマ : 牧之原市

出欠確認厳格さ薄れ こども園化で対応曖昧に/川崎幼稚園㊥【届かぬ声 子どもの現場は今⑱/第3章 言えない環境】

川崎幼稚園の新園舎完成を伝える2015年3月27日付の本紙記事。牧之原市では最初に認定こども園に移行した
川崎幼稚園の新園舎完成を伝える2015年3月27日付の本紙記事。牧之原市では最初に認定こども園に移行した

 「忙しいお父さん、お母さんに代わって、愛情いっぱいに育てたい」
 川崎幼稚園(牧之原市)の新園舎落成式を伝える2015年3月27日付の本紙に、同園を運営する学校法人榛原学園の理事長兼園長(当時)の晴れやかな言葉が載った。写真は春の日差しに輝く新園舎。同年4月、川崎幼稚園は保育機能を加えた「幼保連携型認定こども園」として新たなスタートを切った。
 園児数の減少に悩む幼稚園が経営上の判断でこども園に移行し、保育の受け皿になる例は多く、川崎幼稚園も例外ではなかったとされる。当時を知る関係者は「こども園化で何が変わるのか、分かっていた人はほとんどいなかったのではないか。やってみて初めて多くの課題が出てきた」と見切り発車ぶりを指摘する。
 課題の一つが幼保の文化の違いだ。0~2歳児を受け入れる新設の乳児部と、もともとの幼稚園部分の幼児部の間には保育方針などを巡って「壁みたいなもの」(関係者)が生じた。保育時間の拡大に対応して職員も増えたが、その分、重要事項の共有など意思疎通は難しくなった。
 こども園化をした施設が往々にして直面するとされる課題に対し、かじ取り役の園長が明確な指示を出すことはほとんどなかったという。副園長らも、書類の作成など増大した事務作業に忙殺されていた。環境の変化で生じた現場の保育者の戸惑いはなかなか上層部に伝わらなかった。
 幼保の文化や慣習の違いを整理できないと、対応が曖昧になりかねない。園児の欠席理由の把握がその一つ。小学校前の教育機関に位置付けられる幼稚園は、出欠確認が基本的に厳格で理由もきっちり把握する。一方、福祉施設である保育園は、保護者の就労状況に応じて保育が必要な園児を預かるとの認識がある。
 こども園に移行して幼保の文化が交ざり合う中で、「(幼児部でも)欠席理由を追うことは無意識に曖昧になっていったかもしれない」と関係者は言う。園の送迎バス車内に置き去りにされ、出欠確認も徹底されなかった河本千奈ちゃんは幼児部の園児だった。
 職員の負担が増え続ける中、バスの乗務員の仕事を外部委託する案が持ち上がった。これは現場からの声だった。夕方までの保育が多い乳児部の子どもたちは幼児部に上がってもほとんどが延長保育を必要とすると予想され、さらに業務に負荷がかかるという先行きの不安があったからだ。
 園は外部委託を決めた。職員の負担は減り、業務も効率化されたかに見えた。

牧之原市の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞