テーマ : 牧之原市

園児の入退園をメール通知 千葉のユーチューバー、ソフト開発 牧之原バス置き去りを受け 「無償で安全を」

 牧之原市の認定こども園で昨年9月、園児が送迎バスに置き去りにされて亡くなった事件に心を痛めた千葉県の男性が、園児の入退園を保護者に画像付きで知らせる無料のメール通知ソフトを開発し、普及を目指している。男性は会社勤めの傍ら趣味でソフト開発などをしているユーチューバーのヒコぞーんさん(41)。痛ましい事件に「自分にできることはないか」と得意分野を生かした。個人開発ということもあって認知度は低いものの、「無償で安全を供与したい」と願い、実証実験に協力してくれる園を探している。

ヒコぞーんさんが開発したメール通信ソフト=9月上旬、千葉県
ヒコぞーんさんが開発したメール通信ソフト=9月上旬、千葉県

 事件では当時3歳の河本千奈ちゃんが朝の登園でバスに乗ったまま取り残され、担任らは姿が見えない千奈ちゃんの出欠席を発見されるまで確認しなかった。ヒコぞーんさんは今年3月に千奈ちゃんの父親がX(旧ツイッター)で取り上げた海外の事例を参考に開発に着手。園児に携帯させたICカードをカードリーダーにかざすと、園児の顔が撮影され、画像が保護者にメール送信される仕組み。約5カ月で開発した。
 ソフト自体は無料で、他にインターネット環境とパソコン、カメラ、ICカード、カードリーダーがあれば導入できる。ICカードは1枚100円~200円程度、カードリーダーは数千円で購入できる。機能を絞ったことで、簡単で安価なシステムを実現した。安心、救援を意味するリリーフ(relief)を基に「リリカ」と名付けた。
 事件を受け国が送迎バスへの設置を義務化したブザーなどの安全装置には巨額の公費が補助金として投入されているが、本当に置き去りがないか保護者が確認できないものが多い。「リリカ」なら画像が届かなければ何らかの異常があったと、保護者自身が気付くことができる。「置き去りを二重三重に防ぐためにこういう仕組みがあってもいい」とヒコぞーんさん。9月上旬には岡山県で2歳の男児が祖母の車内で置き去り死する事件が起きた。祖母が保育園に男児を送り届けるのを忘れ、園側も出欠席を確認しなかったとされる。こうした事件はバスの安全装置では防げないが、入退園を保護者にメール通知するシステムなら防ぐことが期待できる。
 開発のきっかけは千奈ちゃんの父親のSNS投稿。「勇気を出して発信していただいたおかげで、自分も何かしなければと思えた」と感謝し、閉じ込められた千奈ちゃんを思うと今でも涙が止まらなくなる。実証実験をしたり、問題があった場合に対処する人員を確保したりと実用化に向けた課題は多いが、「事件を風化させないために活動を続けたい」と強く誓う。
 リリカのサイトは
 https://sites.google.com/view/hikozone

 (「届かぬ声」取材班)

牧之原市の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞