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社説(3月13日)伊豆の歴史資産 誇れる価値、活用工夫を

 静岡県伊豆・東部地域は鎌倉時代から江戸末期までの歴史資産が集積している。色あせない価値を持ち、広くアピールできる地域固有の観光資源だ。誘客につなげるとともに、住民が郷土への関心や誇りをさらに高める資源として、活用の工夫を進めてほしい。
 鎌倉幕府第2代執権の北条義時を主人公にした大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の舞台の一つとなり注目度が高まっている。一時的な盛り上がりで終わらせてはならない。コロナ禍で観光産業が大幅な停滞を余儀なくされている中、起爆剤として使えるものを貪欲に活用していく姿勢が求められる。
 企業経営研究所(長泉町)は、大河放映に伴い県内で発生する経済波及効果を158億円と試算する。宿泊と日帰り客を合わせた観光入り込み客数も151万人の増加を見込む。コロナ禍の推移で不確定な部分もあるが、この機を生かして持続、拡大できるかどうかは、行政と民間の意欲と、両者の一体感の醸成にかかっている。
 一昨年、伊豆・東部地域の20市町の行政と商工・観光団体などで構成する伊豆・富士山周遊促進連絡協議会が発足した。広域連携を強めることで「売り込み・誘う」を柱とした事業を充実させるのが狙いだ。市町の垣根を越えて拠点をつなぐモデルルートの作成や、ルートにちなんだ物語性の発信などに努めてほしい。
 伊豆は元々、温泉をはじめ食事や景観などが豊かな日本を代表する観光地。多彩な観光資源の総花的な売り込みではなく、成熟した観光地としてテーマを絞った展開を考える段階といえるのではないか。歴史資産に徹底的にこだわり、大きなマーケットである歴史ファンの誘客につなげたい。
 伊豆の国市の自転車施設と大手旅行会社は今月、市内の北条家ゆかりの地を電動アシスト付き自転車で周遊するガイド付きツアーを毎週土曜に開催している。伊豆・東部地域は昨年の東京五輪で自転車競技の会場となり、五輪のレガシー(遺産)でもある自転車との組み合わせも柱になり得る。
 県は「武士の世」の歴史舞台となった本県をアピールするため、「ぶしのくに静岡県」のブランド化に乗り出した。歴史的な文化財を、周遊のためのアクセスしやすさや駐車場の整備状況など観光的な視点を加えて調査し、活用を進める。伊豆・東部地域にとっても大きな追い風だ。
 身近な歴史資産に光を当て直すことで、住民は価値や魅力を再認識できる。その思いは観光客を迎え入れるホスピタリティーの向上にもつながる。

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