川根本町の特産、「メタバース」で買えます 町内の会社、売り場開設
町の魅力が詰まった仮想空間にようこそ―。川根本町の合同会社「結」(高梨太社長)がインターネット上の仮想空間「メタバース」事業に参入し、通話と翻訳機能を備えた同町専用の販売所を開設した。仮想空間で町内の事業者と世界中の人々をつなぎ、物販を促進して地域経済の活性化を目指す。
販売所の名称は「田舎の直送便」。町内の事業者らがブースを構え、川根茶やゆずといった町の特産品や地元ならではの商品を売り出す。今後は自然体験メニューなども販売を予定する。
仮想空間ではCGで作った「アバター」(分身)が来場者の代わりとなり、キーボードで操作して出店者のブースを自由に行き来できる。ブースに入るとテキスト会話や音声通話でやりとりしながら買い物できる仕組み。翻訳機能も備わっている。
メタバースを運営するのは東京都の「Vma plus(ブイマプラス)」。高梨社長がビジネス向けにメタバースを提供する同社と親交があった縁で、空間の提供を受けた。高梨社長は空間を町専用の販売所として運用し、出店者を募る。来場者が買い物がしやすいように、出店者のブースをジャンルごとに分けたり、商品のコラボメニューの開発も手掛けたりする。
高梨社長がメタバース事業を手がける理由に、資金や技術面で通販事業に参入してこなかった事業者の販路拡大がある。市街地から遠く離れた同町まで足を運ぶのはハードルが高く、コロナ禍が重なり客足は遠のきつつあった。高梨社長は「現実に似た空間で事業者と交流しながら、買い物を楽しんでほしい。ウェブから現実に人を呼び込むきっかけにしたい」と期待した。
(島田支局・池田悠太郎)
■幅広く普及 成長市場
メタバースは主にオンラインゲームや交流イベントなどで利用が進んでいる。総務省によると、メタバースの世界市場は2030年には6788億ドル(約90兆円)に達するとされ、21年の約17倍と予想される。
一部大学ではメタバースでの講演を実施。仮想空間上に再現した街でイベントを開き、現実への来訪を促す試みも複数の地域で展開されている。
近年では交流サイト(SNS)のフェイスブックが社名を「Meta(メタ)」に変更して主要事業としたほか、マイクロソフト(MS)も参入し注目を集めた。
メタバース 英語で超えるという意味の「meta」と、宇宙を表す「universe」を組み合わせた造語。自身の分身「アバター」のキャラクターを使い他のユーザーと会話が楽しめたり、仕事ができたりする仮想空間を意味する。