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新人19人出馬、9人初当選 富士市議選、関心は限定的【統一地方選しずおか 検証 後半戦㊤】

 「投票には必ず行ってきましたが、これまで決起集会や出陣式には行ったことはありません。皆さんも選挙を戦うには素人だと思います」

初めての選挙戦への支援に頭を下げる植松光徳氏。富士市議選では新人9人が初当選した=22日、富士市蓼原
初めての選挙戦への支援に頭を下げる植松光徳氏。富士市議選では新人9人が初当選した=22日、富士市蓼原

 富士市議選(定数32)の投開票を翌日に控えた22日夜。新人候補の植松光徳氏(40)はマイク収めに集まった支援者を見渡した。同級生や職場の賛同者が選挙運動を支え「明日の当落はどのように知ればよいのか」などの素朴な質問も上がった。
 東名高速道富士インターチェンジとJR新富士駅に挟まれた蓼原地区で地元候補は数十年ぶりといわれた。結果は42人の候補者のうち17番目の得票で初当選。初陣を飾った9人を含む19人の新人の中では、3番目の支持を得た。
 ベテランを中心に現職9人が引退し、後継とされる候補以外にも多彩な顔触れが名乗りを上げた選挙戦。「(新人が)15人を超えたぞ」「どこの誰だい」。昨年秋ごろから、市議会の各会派室には現職の声が行き交った。見えない候補は増え続け、関係者の緊張感を高めた。最終的に候補者が定数を10人上回る激戦となった。
 植松氏は病院の事務部長。仕事や趣味のつてをたどりながら、現職が不在の地域を回って地盤を築いた。医療や介護、福祉の充実を掲げて出馬を決意し、従来の取り組みをささげる意志で市議会に加わる。新人を含む会派の調整は水面下で既に始まり、総合計画や予算編成に関する関係部局のレクチャーや議会事務局による研修が続く。
 上位当選した現職は、多様な経歴を持つ新人について「意見集約が難しくなるかもしれないが、それも社会全体の変化の表れ。市議会も適応していかないといけない」と構える。他の現職からは市議会の伝統や継続性が維持されるのかとの危惧もこぼれる。市幹部は「さまざまな公約を目にしたが、市政でできるものばかりではない。期待して投票している人もいるはず」と悩ましさを口にする。
 選挙戦では手腕が未知数の新人候補が独自のスタイルで注目を集めた。組織や選挙カーを持たず、自転車やヒッチハイクで移動した候補者が当選ラインを超えて他陣営を驚かせた。半面、交差点で頭を下げたり楽器を演奏したりするだけの候補も登場し、政策の主張に乏しい活動もあった。現職の一人は「42人の出馬で盛り上がるような捉え方もあったが、それは数字でしかないように感じた」と関心が限定的だったことを指摘する。
 候補者の乱立で上昇が期待された投票率だったが、過去最低を記録した前回選の42・56%をさらに下回る40・92%に落ち込んだ。「多くの人が意欲に燃えたところまでは良かった。これならいいやと思われるような市議会では情けない」(前出の市議)。いっときの話題をさらった選挙は、市議会にどのような変化をもたらすか。
       ◇
 新型コロナウイルス禍を経て初となった統一地方選の後半戦が終わった。県内では3市町の首長選や10の市町議選が選挙戦となり、新人や女性の健闘も目立った。後半戦の主舞台となった県東部で注目選挙区の戦いを振り返る。

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