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女児の父、悲痛の訴え「娘は降りる順番を待っていたはず」 牧之原園児死亡、保護者説明会

 牧之原市静波の認定こども園「川崎幼稚園」が7日に同園で開いた保護者説明会には、送迎バスに約5時間取り残されて命を落とした女児(3)の父親も参加した。出席した保護者によると、父親は「バスに乗るのをいつも楽しみにしていた」などと女児の日頃の様子を語った。発見時の状況も明かし、懸命に生きようとした娘の姿を訴えたという。

川崎幼稚園で開かれた説明会に参加する保護者ら=7日午前、牧之原市静波
川崎幼稚園で開かれた説明会に参加する保護者ら=7日午前、牧之原市静波

 新型コロナウイルスの感染防止のため、バスの中では会話を控えること。自宅から幼稚園までの距離が近く、乗車する園児の中では最後に乗るのだから降車も一番後にすること。女児は事件当日もこうした言いつけを守り、降りる順番を最後まで座って待っていたはずだと話したという。発見時の女児は服を脱いだ状態だったことや、水筒を飲み干していたことも明かした。
 説明会には保護者約110人が参加した。20代の母親は「出欠確認が甘かったと園から説明があった。許せない。自分の子供も同じ目に遭っていたかもしれない」と憤った。同園は後日、改めて説明の機会を設けるという。娘を通わせている男性は「女児のお父さんの話は聞いていて切なかった。園が原因として挙げた四つの問題点にしっかりとした方向性を示してほしい」と語った。
 出席者らによると、女児の父親が話をしている途中に、最前列に座っていた保護者の一人が過呼吸に陥った。席が近かった保護者や室外にいた保育士も呼吸の苦しさや手足のしびれを訴え、20~30代の保護者7人、20~40代の同園の保育士6人のいずれも女性計13人が救急搬送された。静岡市消防局吉田消防署の担当者は「泣き叫んだり、受け答えができなくなったりする人もいた」と当時の状況を振り返った。

 ■「苦しい思いさせ 申し訳ない」理事長謝罪 言葉少なく
 「本当に苦しい思いをさせてしまった。申し訳ない」。記者会見に臨んだ川崎幼稚園の理事長兼園長(73)は頭を下げて謝罪したが、終始言葉には力がなかった。自身の責任について認識を問われると「ご指摘の通り」「甘さがあった」などとうなだれた。
 約2時間40分に及んだ会見には理事長のほか副園長(58)らが出席した。報道陣からは当日の状況や日頃の安全管理に関する質問が相次いだ。
 理事長は福岡県で昨年発生した同様の事件を取り上げた雑誌を職員に配り、「気をつけて」と注意を呼び掛けていた。しかし今回は、理事長が本来行うべきだった降車時の車内確認を怠った。理事長は「過去にも安全確認していなかったわけではない」としつつ「いつも運転していなかったので不慣れだった。年齢のこともあり、本来なら乗らないようにしていたが…」と釈明した。
 理事長に代わり、受け答えのほとんどを行った副園長は女児の人柄を問われると、「人なつっこくて歌が好き。笑顔がとてもかわいい子」と話し、声を震わせた。自宅へ遺族を訪ねた際には、幼稚園で習った歌を家で歌う女児の動画を見せてもらったという。女児が欠席すると思い込んだことについて「確認が徹底されていればよかった。ルールの不備があった」と悔やんだ。

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