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テーマ : 富士宮市

関連死防ぐ「TKB48」 吉野篤人・浜松医科大地域医療学講座特任教授 【提言・減災】

 能登半島地震から2カ月がたちました。今回の地震でも懸念されているのが「災害関連死」です。災害関連死は初期の家屋倒壊や津波を原因とする「直接死亡」よりも対策によって減らすことができるとされています。避難所・避難生活学会では災害関連死を防ぐキーワードとしてTKB48を提唱しています。TKBが表すのはT(トイレ)、K(キッチン=食事)、B(ベッド)です。48は「48時間以内に整備する」を意味します。

吉野篤人氏
吉野篤人氏

 今回の地震でも多くの地域で上下水道の障害が発生しました。飲料水はペットボトルなどで配布されるとしても、水洗トイレが使えません。運動場に設置されるような仮設トイレは階段があり和式が主なため、高齢の方や下肢に不自由のある方は使用が大変です。トイレに行く回数を減らそうと水分摂取を控えることが起こります。
 対策としては、例えば熱圧着によって排せつ物を1回ごとにラップするトイレがあります。座位で使用でき、においもとじこめますのでミニテントなどを利用して屋内に設置することもできます。食事もおにぎりや菓子パンなどばかりでは塩分や糖質が多めで、野菜が不足します。発災直後はやむをえないとしても、キッチンカーなどを活用して栄養に配慮した温かな食事の配布が期待されます。
 体育館などの床に布団を敷いての雑魚寝は、感染症を起こしやすいとされます。段ボール製のベッドを使うことにより底冷えや、ほこりの吸い込みを減らすことができます。立ち上がりやすいので活動性低下防止にもなります。避難所にベッドが普及するとエコノミークラス症候群が減少するとされています。
 さらに今回の能登半島地震のような寒冷地での冬季の災害ではW(Warm=暖房)が加えられ、災害関連死への対策として「TKB+W」が重要となります。

 よしの・あつと 浜松医療センター総合診療科医長、浜松医科大付属病院講師、同大救急災害医学講座教授などを経て2024年2月から現職。専門は救急医学。災害医療チームの指導役として現場で活動する。

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