あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 富士宮市

富士宮市 小規模森林整備補助金 災害の芽摘む一歩に【2024 注目予算】

 富士宮市西部、上柚野地区を流れる柚野布沢川。上流の山あいには無数の倒木が横たわり、大雨などの増水時に水の流れをせき止めかねない。山を所有する佐野良彦さん(84)は数年前まで自力で手入れをしてきたが、作業中に転倒して負傷し、管理ができなくなった。「荒廃が進んで災害が起きないか」と懸念する。

柚野布沢川に倒れ込んだ樹木。周辺は民有林で、対応は所有者に委ねられている=富士宮市上柚野
柚野布沢川に倒れ込んだ樹木。周辺は民有林で、対応は所有者に委ねられている=富士宮市上柚野

 市によると、民有林は1ヘクタール未満の小規模森林が52・5%を占め、うち67・2%が個人所有。現状では国や県の森林保全に関する補助金では1ヘクタール未満は対象外とされ、市は2024年度から1ヘクタール未満の森林整備に独自の補助金を交付する。
 経費の5割を上限50万円で補助する。公益性の高い整備が期待される道路や河川に隣接した土地には、50万円を上限に3分の2を出す。県の育成経営体に該当する市内7社による施工が条件で、若手従事者の育成も図る。当初予算案に1200万円を計上した。
 市内では近年、倒木が道路をふさいだり電線に接触したりして市民生活に影響が出ている。樹木は所有者の財産のため、対応は所有者に委ねられる。市農業政策課の担当者は「補助金が整備を決断する後押しになれば」と期待を込める。
 山を管理して50年超の佐野さんは、けがを負うまで自力で機材を運んで作業し経費を抑えてきた。「所有者の高齢化が進み、木材価格も不安定。市の補助制度は歓迎だが、多くの所有者が利用するには補助率や上限額に検討の余地があるのではないか」と指摘する。

記者の目 実効性高め理解促進  小規模森林整備補助金は、24年度から国民1人年間1000円が住民税に上乗せして徴収される森林環境税が財源となる。各自治体には19年度から先行して森林環境譲与税が交付され、地域の実情に合った事業が展開され始めている。実効性を高め、住民生活に寄与する成果を求めたい。
 市は地域住民から山に関する苦情が入ると、所有者に書面で通知していた。だが、強制力はなく進展しない例が多い。補助金の趣旨と概要を丁寧に説明し、所有者に行動を促すことが求められる。荒廃に伴って周辺住民の生活に支障が出ている場合、自治会と連携をとる必要もあるだろう。
 森林環境税の納税義務者とされる約6200万人の大半は森林と縁遠い。生態系や水源の維持に不可欠な国内の森林で荒廃が進んでいると周知し、保全に対する理解を広める施策も同時に進めなければならない。
 (富士宮支局・国本啓志郎)

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

富士宮市の記事一覧

他の追っかけを読む