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静岡空港から台湾へ 歴史と食、満喫の縦断旅【静岡新聞社記者ルポ】

 静岡空港と台湾を結ぶ定期便復活に向けた機運醸成を図るため富士山静岡空港利用促進協議会が主催した4泊5日(1月19~23日)の台湾ツアーに参加した。台湾南部の高雄から北上する行程で、歴史を感じさせる建造物や豊かな食文化を満喫した。高雄から台中、台北近郊に分けて、旅を振り返る。(政治部・池谷遥子)
300年以上の歴史がある「三鳳宮」。台湾観光庁が新たな観光地としてPRする=台湾・高雄
高雄~台中 「映える」寺院が新名所
 静岡空港からチャーター便に乗り約4時間、降り立ったのは台湾第2の都市とされる南部の高雄。海沿いにはオフィスや宿泊施設を併設した地上85階建てビルがそびえ、日本人も設計に携わったという高雄市立図書館、ユニークな形をしたコンベンションセンター「高雄展覧館」など近代的な建物が並んでいる。
 日本より温暖な気候で、この日は現地で買った半袖のTシャツに着替えて観光地を巡った。約300年前に創建された「三鳳宮」は台湾観光庁が新たな観光名所としてPRに力を入れるインスタ映えスポット。釈迦[しゃか]如来や観音菩薩[ぼさつ]など、さまざまな神仏を祭る寺院で、建物の細かな装飾も見応えがある。
 バスに揺られて向かった台南はオランダ統治時代に政庁が置かれて以降、中国明代の遺臣で台湾の英雄鄭成功(1624~62年)がオランダ軍を撃退後も200年以上にわたって台湾の首府として繁栄した古都。「台湾の京都」ともいわれ、寺社や歴史的建造物が集う。台湾を奪回して開拓した鄭を祭る「延平郡王祠」は、コスプレーヤーが写真撮影を楽しむなど、市民の憩いの場となっていた。
 山口県出身の商人が1932年に創立した「林百貨店」は台湾で初めてエレベーターを備えた建物。閉店を経て2014年に改装され、メード・イン・台湾の雑貨や衣服が並ぶデパートとなったという。多くの人でにぎわい、全部を見て回るには長めの時間を取った方がよさそうだ。
 台中の「宮原眼科」も日本人が建てた人気スポットの一つ。台湾が日本の統治下だった1927年、日本人の眼科医が開業した病院をリノベーションし、現在はパイナップルケーキやチョコレートなどのスイーツを扱う店舗に。パッケージもかわいらしいお菓子の数々はお土産に最適だ。
「宮原眼科」で行列のできるアイスクリーム。色とりどりでボリューム満点=台中  夜市で海鮮に舌鼓
 古くから港町として栄える高雄。宿泊先の最寄り駅「市議会駅」から地下鉄で約5分、米国の旅行サイトで世界で2番目に美しい駅に選ばれた「美麗島駅」まで移動し、この町最大の夜市「六合夜市」を訪れた。麺類、果物、菓子と、台湾の味が勢ぞろい。その中でも、港町らしく海鮮料理が豊富だ。店舗前に並んだ魚介類から好きな食材を選び、目の前で調理してもらう。熱々のイカやホタテ、カキなどの海鮮と、冷えたビールは相性抜群だった。
 台中の宮原眼科で行列ができていたのはアイスクリーム屋。60種以上のアイスの中から好きなものを載せられる。さらに果物やケーキなどのトッピングも選ぶことができた。食べる前に写真に収めておきたい“映えスイーツ”の一つだ。
㊤「世界で2番目に美しい駅」に選ばれた美麗島駅、㊦海鮮を中心にさまざまな台湾食材が集まる高雄最大の夜市「六合夜市」
 2024年6月に開港15周年を迎える静岡空港。新型コロナウイルス禍を経て、23年には韓国・ソウル便、中国・上海線の定期便が再開し、ベトナムからのチャーター便も運航した。節目の今年は1~3月に高雄と静岡空港を結ぶチャーター便の運航があり、台湾便の復活を目指して着々と準備が進む。 photo03
台北近郊 充実した定番名所巡り 最古の寺や夜市堪能

  富士山静岡空港利用促進協議会主催の台湾ツアーの後半は台北近郊エリアを訪れた。台北の「忠烈[ちゅうれつ]祠[し]」は、中国の清朝が倒された辛亥革命や抗日戦争などで命を落とした30万人以上の軍人の英霊を祭る、日本の靖国神社のような場所だという。英霊と建物を守る衛兵の交代式が1時間に1回行われ、厳かな雰囲気の中で表情一つ変えずに一糸乱れぬ動きを見せる兵士の姿にくぎ付けになった。
「忠烈祠」の衛兵交代式。一糸乱れぬ行進は圧巻だ=台湾・台北
 中正紀念堂は、中華民国(台湾)の初代総統蔣介石(1887~1975年)の業績をたたえて建てられた。約25万平方メートルの広大な敷地には蔣介石の巨大な像が安置されるほか、庭園や劇場も併設されている。広場では学生がダンス練習や部活動を行ったり、地元民が散歩したりと思い思いに過ごす。
台湾最古の寺「龍山寺」。多数の神仏が祭られ、御利益も多岐にわたる=台湾・台北
 1738年創建で台北最古の寺「龍山寺」も訪問。屋根や柱には精緻な彫刻が施され、極彩色の外観が目を引く。主神の観音菩薩[ぼさつ]以外にも、知恵をつかさどる「文殊菩薩」、航海・漁業の守護神「媽祖[まそ]」などの神仏が祭られ、御利益は仕事や学業、恋愛など多岐にわたり、拝観者は自分の願い事に合った神仏の前で手を合わせる。記者が台湾式みくじで結婚運を占ったところ、「今ではない」との結果だった。
 台北最大規模の夜市「士林夜市」は食だけでなく、輪投げや射的、ボードゲームが楽しめる屋台、お手頃価格で買える土産物屋も豊富だ。その中で若者が列を作っていたのはエリンギ焼きの屋台。特製の甘いタレを付けて焼き、一口サイズにカットしたエリンギに、ワサビやのり塩など好みの味付けをして味わう。見た目以上のボリュームで、数人で分け合って食べるのがおすすめだ。
士林夜市で行列ができていたエリンギ焼き。好きな味が選べるのが魅力=台湾・台北
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 台北近郊では、有名な定番の観光スポットを巡ったが、歴史や自然、食の充実ぶりを強く実感した。新型コロナウイルス禍以前、静岡空港から定期便が運航されていた頃にリピーターが多かったことも納得できるエリアだった。

ジオで伊豆とつながり  台湾の北海岸エリアにある野柳地質公園は、ジオパークのつながりで伊豆とも交流があるという。海に突き出た岬にあり、雨や風で浸食された不思議な形をした岩が点在している。中でも、横向きの女王に似ているという「女王の頭」と呼ばれる岩が人気の撮影スポット。雨風の浸食により女王の首部分が年々細くなり、数年以内に折れてしまうとされている。1月半ばのこの日は悪天候にもかかわらず、近くで一目見ようと多くの観光客で大行列となっていた。
野柳地質公園の目玉撮影スポット「女王の頭」。数年で折れてしまうとされている
 台湾観光で欠かせないのは台北中心部から車で北東に約1時間の地点にある九份。アニメ「千と千尋の神隠し」の世界観とイメージが重なる場所として知られる。夜は斜面沿いに並ぶ店舗の赤いちょうちんの明かりがなんとも幻想的だ。九份の人気スイーツはタロイモを使ったぜんざい。温かいタイプと冷たいタイプが選べる。台湾では珍しい寒波の到来で、とても寒かったため温かい方を選択した。もちもちのイモ団子と甘いお汁は、冷えた体にほっとする一品だった。
人気アニメの世界観と重なるとされる九份。赤いちょうちんの明かりが幻想的 photo03

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