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反戦の思い貫いた記録 元高校教諭の塚本さん遺稿集を発刊、仲間が編集

 ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ問題、軍備増強を推し進める中国の動向など国際平和に緊張と不安が漂う中、生涯を通して反戦を訴え続け6月に急逝した元高校教諭、塚本清一さん(享年81)=藤枝市=の遺稿集が発刊された。3章仕立てで全175ページに及ぶ冊子には、教壇や地域でひたすらに平和を願い歴史を伝え続けた真摯(しんし)な思いが込められている。

平和を願う思いが込められた塚本さんの遺稿集
平和を願う思いが込められた塚本さんの遺稿集
「憲法に学ぶつどい」で司会を務めた塚本清一さん=2010年5月4日、藤枝市(大石恒雄さん撮影)
「憲法に学ぶつどい」で司会を務めた塚本清一さん=2010年5月4日、藤枝市(大石恒雄さん撮影)
平和を願う思いが込められた塚本さんの遺稿集
「憲法に学ぶつどい」で司会を務めた塚本清一さん=2010年5月4日、藤枝市(大石恒雄さん撮影)


 塚本さんは太平洋戦争が勃発する1941年に御前崎で生まれた。戦後の米国占領下を経験して進学した静岡大教育学部の学生時代が60年安保闘争と重なり、社会変革の機運を痛感する学生時代を過ごした。卒業後は高校の社会科教諭として静岡県内各校で教えた。初任地の松崎高では、生徒にそれぞれの親世代が経験した戦争の悲惨さを聞き取らせ冊子にまとめるなど、授業を通して平和教育に力を入れた。定年後は地域の市民活動へ積極的に参加。執筆活動にも本腰を入れ、本紙読者投稿欄にも度々社会問題について意見を寄せた。
 遺稿集は静岡県近代史研究会の会員で塚本さんと30年来の付き合いがある竹内康人さん(66)=浜松市東区=が編集した。県内有志で構成する「映画『侵略』上映委員会」の会報に塚本さんが連載した記事を中心にした第1章では、戦中戦後を通して戦争に反対した人々の評伝を紹介。軍隊の慰問時に軍歌ではなくブルースを歌い上げた歌手・淡谷のり子や、志太郡相川村(現・焼津市)出身で帝国主義を批判し「小日本主義」を唱えた東洋経済新報社の元主幹、三浦鉄太郎など県内外の約30人の逸話をまとめた。「戦争・植民地責任を問う」と題した第2章では、太平洋戦争に関する歴史教科書の記述問題に社会科教諭として舌鋒(ぜっぽう)鋭い持論を展開する。第3章「戦争に反対する」では、日本の国防問題や憲法改悪を批評し、藤枝市内を1人で戸別訪問して回った憲法9条改憲反対署名運動で得た体験をユーモラスな短歌やシニカルな短歌で表現。苦労して賛同を得た喜びを「9条は 世界に誇る 条文と 署名快諾 せし人もあり」とつづる。
 塚本さんらとともに「志太・憲法を大切にしよう会」を設立した大石恒雄さん(73)=焼津市=は「塚本さんが希求した世界平和への思いを多くの人に伝えたい」と話す。竹内さんは「真面目で、時に頑固に反戦を訴え続けた1人の人間が残した証しが、歴史を改めて考える機会につながれば」と期待した。
 遺稿集は300部製作。1部千円。希望者は竹内さんのメール<paco.yat@poem.ocn.ne.jp>もしくはファクス<053(422)4810>へ。
 (社会部・薬袋貴信)

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