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#防災力を高めよう 家にある物使い災害用トイレ 段ボールで手作り【NEXTラボ】

 水や食料、カセットボンベ-。能登半島地震を受け、家庭の備蓄を見直した人も多いが、トイレの備えはどうだろうか。静岡県によると、家庭で携帯トイレを備える目安は「1日5回分×1週間×家族の人数」。5人家族では計175個必要になるが、用意できるのか。日常生活で無理せずできる「トイレ備蓄」の工夫や心構えを探った。
段ボールトイレの制作に取り組む参加者=2月下旬、藤枝市
 2月下旬、藤枝市内で開かれた防災講座。同市で活動する藤枝災害支援ネットワークが主催し、10人が参加した。テーマは、家庭やスーパーにある段ボールを使ったトイレ作りだ。
 災害用トイレはさまざまな種類の製品が市販されている。代表の吉田令子さん(68)は手作りの段ボールトイレについて、身近な材料で作れて安価▽軽くて簡単に運べる▽座っても冷たくない▽水道・電気が止まっても使える▽高さがあれば膝が痛くならず、力める▽1人1台あれば感染予防になる-など、多くの利点を挙げる。
 作り方は次のような手順。①同じぐらいの大きさの段ボール箱を2箱用意して重ね、一つの箱にはめ込む。目安は縦30センチ×横40センチ×高さ30センチ。開口部を粘着テープでしっかり留める②上部に四角または楕円[だえん]の穴を開ける③座ったときにつぶれないよう別の段ボールを丸めて芯を4~8本作り、四隅や側面にはめ込んで完成。ここまで1時間ほどで、余裕のある人は便器のふたも制作した。
段ボールトイレの作り方
 使う時は、穴に45リットルビニール袋を二重に取り付け、中に凝固剤を入れておく。凝固剤がなければ、新聞紙やペット用のトイレシートなどでも代用できる。臭い対策も重要だ。消臭スプレーをかけたり、ふたを閉めたりすれば軽減できる。使用後は内側の袋を外して袋の空気をなるべく抜いて縛り、ふた付きの容器で保管する。
 避難所へ行かずに自宅での生活を続ける際の使用を想定する。停電で屋内の換気扇が使えない場合は、ベランダや庭に縦型のテントを立て、その中に設置すればよい。一方、水に弱いことや、段ボールによっては耐久性が低い点には注意が必要だ。
 吉田さんは「ホームセンターなどで袋と凝固剤をまとめて購入しておけば経済的。専用の商品だけを買いそろえなくても、家にある物はいろいろな使い道がある。使い方をイメージしながらそろえてほしい」と助言する。 飲食と排せつはセット  県が2023年11月~24年1月に実施した南海トラフ地震に関する県民意識調査では、能登半島地震を受けてトイレ備蓄への関心が高まっていることがうかがえる。
 家庭に携帯トイレや簡易トイレが「備蓄あり」と回答した人は、能登半島地震前は53.7%だったが、地震後は65.1%に上昇した。ただ、食料、飲料水はそれぞれ約9割が「備蓄あり」と回答したのに比べると、トイレ備蓄の必要性は十分に浸透しているとは言い難い。備蓄状況も「7日分以上」としたのは20.4%にとどまった。
 トイレに行く回数を減らそうと水を飲むことを控えると、体調を崩して災害関連死につながる可能性もある。県は「食べる・飲む・排せつはセット」と啓発している。 いろいろな「もしも」想定 必要な物を分散  家庭のトイレ備蓄は十分だとしても、災害時に自宅で被災するとは限らない。県地震防災センター(静岡市葵区)の地震防災アドバイザー深沢良子さん(53)は携帯トイレの分散備蓄を実践。「出社する人もいればリモートワークを選ぶ人もいて、活動範囲は多様化している。自分の生活圏で危険な場所はないかハザードマップなどで確認し、必要な物は何か一度でも考えてほしい」と呼びかける。さまざまなパターンを想定した職場での備蓄を見せてもらった。 被災後も仕事?  -災害時に外で業務をするかもしれない。
 デスク近くのロッカーにすぐに持ち出せる小さな防災バッグを置いている。中には救急セットや非常食、携帯トイレが入っている。外にトイレがない可能性も考え、携帯トイレとともに使えるポンチョも入れた。 ポンチョを紹介する深沢さん=2月下旬、静岡市葵区の県地震防災センター帰れないかも…  道路状況で自宅に帰れないかもしれない。
 着替え用の大きなロッカーに5回分の携帯トイレや体を拭くシート、ペーパー歯磨きなどを備えている。「発災からしばらく時間がたって必要になる物」を意識した。
着替え用ロッカーに用意してある備蓄品 車にバケツ  移動中に被災するかもしれない。
 自家用車には、保冷バッグやクッションの中に非常食や着替えなどを備蓄している。買い物で保冷バッグが必要な時は備蓄品を取り出して使う。携帯トイレはダッシュボード内に準備。バケツも積んであるため、袋を取り付けて凝固剤を使えばトイレになる。 
車に積んだ備蓄品

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