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コラム窓辺 夢中になれる選択肢【水野裕央/日本銀行静岡支店長】

 公園では、真新しいぶかぶかのユニホームを着た子供たちがサッカーボールに群れをつくる。ボールさばきのうまさよりも、空振りし転んでしまうかわいさが勝る。静岡ではそんな光景をよく目にする。
 子供たちを見て、小学生時代の記憶がよみがえる。当時、主人公の大空翼が静岡から世界へ羽ばたく物語を描いた、高橋陽一先生作のサッカー漫画「キャプテン翼」に子供たちはのめり込んだ。サッカー部の朝練は毎日楽しく、漫画の選手をいろいろまねしたが、ボールを奪取するためのスライディングタックルしかできなかった。砂だらけの体操着と擦り傷がサッカーに夢中の証しだった。
 私たちを夢中にさせた「キャプテン翼」は、4月に連載が終了する。また、主人公のように、世界の扉を切り開き、私たちを魅了した高原直泰選手や小野伸二選手が引退した。何だか一つの時代が終わった寂寥[せきりょう]感を覚える。
 ただ、新しい時代の始まりともいえる。両選手をはじめ静岡出身のサッカー選手が世界で活躍したおかげで、現実の選手の勇姿を見た子供たちが成長し、日本代表や海外チームの中心となる時代が到来している。
 折しも、藤枝市では「サッカーのまち100周年」の記念すべき年を迎えた。躍動感あふれる藤枝MYFC、黄金時代の再来を期待したいジュビロ磐田、J1復帰を目指す清水エスパルス、そして数々の感動を生んだ中山雅史監督が率いるアスルクラロ沼津。いずれも開幕が待ち遠しい。
 夢中になれることほど幸せなことはない。静岡から、多くの人にサッカーという夢中になれる選択肢を熱く伝えてほしい。
 (水野裕央=みずのひろお/日本銀行静岡支店長)

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