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「アルプスの少女ハイジ」のロッテンマイヤー アレンジで魅力際立つ【アニメ脇役列伝 1970年代編⑧】

 「アルプスの少女ハイジ」は、とても丁寧にアニメ化された作品だが、原作と異なる点もある。例えば、ハイジが身を寄せるアルムのおんじのところにいるセントバーナード犬ヨーゼフ。これは原作には存在しないアニメオリジナルのキャラクターだ。
 なにより異なるのはキリスト教の扱いだ。原作がキリスト教の素晴らしさを説く物語であるのに対し、アニメはハイジの無垢な魅力とアルムの自然こそ素晴らしいものとして描いている。このアレンジでキャラクター性が際立つことになったのがゼーゼマン家に仕える執事の女性ロッテンマイヤーだ。
 ゼーゼマン家には足の不自由で体の弱い娘クララがいる。クララがこれ以上悪くならないようにとクララを厳しく束縛するロッテンマイヤー。そこにハイジがクララの話し相手として連れてこられ、自然児であるハイジがクララの心を解放していく。
 逆にロッテンマイヤーは、ハイジに振り回され、金切り声で叱りつけることになる。彼女はハイジを「アーデルハイド」と呼ぶが、これはハイジの洗礼名で、そこにこだわるのは彼女が敬虔[けいけん]なクリスチャンである証でもある。
 当時テレビを見ていた子供にとってはうるさくて怖く見えたロッテンマイヤー。でも改めて見直してみると堅物な彼女がうろたえたり怒る様はむしろユーモラス。なにしろ動物が苦手で、ネズミどころか子ネコにもカメにも大騒ぎするのである。おそらくハイジも小動物っぽい予測不能の行動をするところがあるから苦手だったのではないか。そう思うとなんとも人間味のある人物に思えてくる。
 原作のままキリスト教の大切さを説く物語であれば、ロッテンマイヤーがコメディエンヌとしてここまで魅力的にはならなかっただろう。
 (藤津亮太・アニメ評論家=藤枝市出身)
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 筆者はSBSラジオ「TOROアニメーション総研」(毎週月曜午後7時)出演中。SBS学苑パルシェ校で26日に講座「アニメ映画を読む」。テーマは「アイの歌声を聴かせて」。

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