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「巨人の星」のアームストロング・オズマ 真の意味でのライバル、親友【アニメ脇役列伝 1970年代編⑨】

 野球漫画の金字塔「巨人の星」の主人公・星飛雄馬のライバル、というと、阪神・花形満か大洋・左門豊作を思い出す人が多いだろう。だが真の意味で飛雄馬のライバルはアームストロング・オズマだった。オズマの一言こそが飛雄馬に重大なアイデンティティー・クライシスと変化をもたらしたのだ。
 オズマは、カージナルスの科学的なトレーニングによって徹底的に鍛えられた野球選手だ。練習のために父親の死に目に会うことも禁じられた彼は、心を持たない“野球ロボット”として作り上げられたのだ。そんなオズマは日米野球で来日した折に、対戦相手の飛雄馬に共通するものを感じる。飛雄馬もまた父・一徹のスパルタ指導により、野球以外のものを切り捨て生きてきた存在だ。オズマは飛雄馬に対した時、同族嫌悪から「俺とおまえは野球ロボットだ」と鋭く言い放つ。
 オズマは花形や左門よりも深いところで飛雄馬とつながっている。だからこそ互いに否定したくなる。それがオズマと飛雄馬の関係だ。
 飛雄馬は自分がロボットではないことを証明するため、年俸の倍増を求めたり、アイドルのルミ(オーロラ三人娘)と親密になったりなど“人間らしい”振る舞いを重ねる。クリスマスパーティーを企画したが誰も来なかったのもこの時だ。しかし、こうした回り道のおかげで飛雄馬は、自分にとって野球がかけがえのないものだと再発見できたのだ。
 一方、オズマはその後、ベトナム戦争に従軍しけがをしたことで、悲劇的な運命を歩むことになる。飛雄馬の魔球・大リーグボール3号を打ち込むことを望んでいたオズマだったがその夢がかなうことはなかった。飛雄馬のもとに届いた、オズマの婚約者からの手紙には飛雄馬のことが「世界でただひとりの親友」と記されていた。
 (藤津亮太・アニメ評論家=藤枝市出身)  筆者はSBSラジオ「TOROアニメーション総研」(毎週月曜午後7時)出演中。SBS学苑パルシェ校で来年1月28日に講座「アニメ映画を読む」。テーマは「伝説巨神イデオン」。

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