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テーマ : 焼津市

第五福竜丸、記憶つなぐ舞台 水爆実験で被災、来春70年

 米国による太平洋・ビキニ環礁での水爆実験で漁船「第五福竜丸」が被ばくしてから来年3月で70年となるのを前に、劇作家・演出家の坂手洋二さん(61)が主宰する劇団「燐光群」が、事件をテーマにした舞台の稽古を続けている。元乗組員23人のうち、存命なのは2人。「記憶を途切れさせてはいけない」との思いで11月17日の初舞台に臨む。

「わが友、第五福竜丸」の稽古をする坂手洋二さん(右)と出演者=10月、東京都内
「わが友、第五福竜丸」の稽古をする坂手洋二さん(右)と出演者=10月、東京都内

 舞台は「わが友、第五福竜丸」。東京・高円寺を皮切りに、第五福竜丸の母港だった静岡県焼津市、建造地・和歌山県串本町、当時同じ海域で被ばくした多くの日本漁船が出航した高知県のほか、名古屋市、大阪府吹田市、岡山市で行われる。
 劇中では、被ばくの体験を語り続け、2021年に87歳で亡くなった元乗組員大石又七さんが、目の見えない中学生に模型船を作ったエピソードに触れる。別の漁船に乗っていて水爆実験に遭遇した漁師や、第五福竜丸の保存を訴えた人らの姿を通じて、現代の社会がビキニ事件に向き合う意味が浮かび上がる。
 坂手さんは、東京電力福島第1原発から出る放射性物質を含む処理水が海に放出されたり、福島県の除染土が新宿御苑などで再利用されようとしたりしていることに「核や被ばくの問題は暮らしと密接につながっている」と感じている。
 台本執筆のため関連資料を読み込む中で、ビキニ事件後、日本政府の調査船「俊鶻丸」が周辺海域の海水や魚の汚染状況をつぶさに調べていたと知った。「その歴史をもっと多くの人が知るべきではないか」
 出演者の小山萌子さん(47)は「核実験による被害は今も続いている。核がなくならない現状でいいのか、芝居を通して多くの人に問いかけたい」と話した。

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