記者コラム「清流」 骨のない干物
焼津市で開かれた県水産加工品総合品評会の会場でのこと。出品された水産加工品の中で、ひときわ目を引く商品があった。
「昭和」「平成」「令和」の包装ごとに、形状が異なるアジの干物が並んでいた。昭和は一般的な干物の姿だったが、平成は頭と尾がなく、令和はさらに骨が外されていた。試食すると「昭和」が一番おいしく感じ、骨のない干物への違和感を抱きさえした。
開発の狙いが知りたくなり、製造業者のウェブページをのぞいてみた。より食べやすく、家庭の廃棄も減らし、「ただ焼くという干物の概念から料理としての干物へ」とあった。
同社は全国審査会で農林水産大臣賞の受賞歴もある。本流を極めつつ時代や消費の変化に柔軟に対応すること。新聞業界にも必要な姿勢だと襟を正された。
(経済部・垣内健吾)