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ウクライナ侵攻 避難者、心痛の日々続く【追跡2022⑤】

 14日、藤枝市の村上開明堂築地工場で、ウクライナ人の40代男性が就職面接に臨んだ。日本語を学び始めたばかり。男性は机の下で終始固く手を握り、通訳を介して質問に答えた。同工場では先に避難者の男性を受け入れた実績がある。社員がその“先輩”を紹介し、「彼は最初、もっと緊張していた。あなたも大丈夫だよ」と声を掛けると、男性の表情が初めて緩んだ。

就労に向け面接に臨むウクライナ人男性=14日、藤枝市の村上開明堂築地工場
就労に向け面接に臨むウクライナ人男性=14日、藤枝市の村上開明堂築地工場

 2月24日にロシアが首都キーウを攻撃してから10カ月。終わりが見えない戦争は、人々の人生を一変させた。男性はウクライナ国外で働いていたため対象にならなかったが、同国では18~60歳の男性は出国が禁止されている。日本への避難者は女性や高齢者が中心で、働き盛りの男性は少ない。
 「私、分かる。男の人はつらいと思う」。7月に来日し、語学学校に通う女性(26)は思いをくむ。「皆『自分だけ(安全な所にいて)申し訳ない』って気持ちがあります」。女性はウクライナで大学時代にジブリ映画を見たことを機に独学で日本語を習得し、留学資金をためていた。訪日は「避難」という思わぬ形で実現した。
 食文化の違いや自炊、遠方まで自転車で移動して学業とアルバイトを両立させるなど、現状の生活は楽ではない。さらに冬を迎えた母国の大規模停電、家族の安否確認ができない日など、遠い「ふるさと」の苦境は日々心に影を落とす。「日本企業への就職」という次の夢は、女性にとって生きる希望だ。
 女子学生4人を受け入れたオイスカ開発教育専門学校(浜松市西区)。学生たちは口々に「日本を選んで来た」「静岡の人たちに感謝を伝えたい」と語った。日本語科長の菅原敦夫さんは「毎日楽しそうに過ごしているが、家族が召集されたり、実家の地区がミサイル攻撃を受けたりと、極限の状態は続く。心をケアしながら寄り添いたい」と話す。

 <メモ>ロシアによるウクライナの軍事侵攻を受け、2200人ほどが日本へ避難した。県内では約40人が「希望のつばさSHIZUOKA」などの支援を受ける。帰国の見通しが立たない中、日本語習得や就労支援など生活基盤の強化が課題になっている。

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