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リハビリ病院に運転シミュレーター 脳卒中患者ら可否判断の材料に 高齢者の検査、訓練利用も 藤枝

 藤枝市宮原の聖稜リハビリテーション病院は今夏、医療機関向けのドライブシミュレーター1台を導入した。脳卒中により高次脳機能障害を負った患者が退院後も自動車の運転を再開できるように、教習所で実際に乗る前に運用、評価して運転可否の判断材料にする。身体機能が低下した高齢者に対しても検査、訓練用として利用を促し、交通事故の削減に役立てる。

リハビリ室に設置したドライブシミュレーター=藤枝市宮原の聖稜リハビリテーション病院
リハビリ室に設置したドライブシミュレーター=藤枝市宮原の聖稜リハビリテーション病院


 日本脳卒中学会がまとめた2021年の脳卒中治療ガイドラインによると、脳卒中発症後1年以内の運転再開は交通事故のリスクを6倍にするという報告がある。ただ、同病院がある藤枝市の中山間地域など車がないと生活が困難な患者も多いのが実態だ。
 これまでは退院後、医師の診察を受けた上でリハビリ専門職による運転に必要な能力の評価を受け、教習所で実車評価を行う流れだった。同病院はドライブシミュレーターを使って実際の車に近い感覚で運転を練習する機会を設けている。
 同病院の五十嵐有紀子医師(55)は「実際に運転する前に何らかの評価や訓練が必要。実車評価の時点で運転が可能か初めて確かめるのは危険」と指摘し、「運転できる可能性がある人もいる。きちんとした評価の上で運転を再開させてあげたい」とシミュレーター運用の意義を語る。
 導入したドライブシミュレーターは、ホンダが今春に医療機関向けに発売した「DB型Model-A」。通常のシミュレーターにはない運転座席を装備し、実際の運転感覚を体験できる。リハビリ中の患者向けに認知や判断、操作など運転に関わる動作、反応速度の測定データを数値化し、運転能力を客観的に比較、評価する。
 県内で高齢者による事故が多発する中、事故防止につながることも期待される。県警によると、県内の人身交通事故件数は9月末時点で1万3535件、死者数は51人。このうち、高齢運転起因事故は3387件、死者数は18人に上る。
 同病院によると、運転の再開は患者や高齢者のリハビリの目標になる。作業療法士の藤牧由衣さん(25)は「患者を支援するツールの一つにしたい」と話す。企画担当課の佐々木千津子課長(61)は「高齢者も実際にシミュレーターを体験することで、どれだけ運動機能が落ちているかを理解できる。事故が少しでも減ってほしい」と強調した。
 (藤枝支局・青木功太)

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