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社説(10月4日)首相所信表明 「聞く力」その先を語れ

 臨時国会が召集され、岸田文雄首相が所信表明演説を行った。ロシアによるウクライナ侵略と円安などによるエネルギー・食料価格の高騰、世論を二分した安倍晋三元首相の国葬、深刻な政治家と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係など、取り組まなければならない課題が山積する中、首相は国民が納得できる対応を迫られている。
 首相は所信表明で、「厳しい意見を聞く姿勢にこそ」自らの原点があると強調した。批判的な世論を意識していることは明らかだ。ところが、国葬実施に代表されるように国民の声を聞いたとしても聞き流してこなかったか。それが夏以降の内閣支持率の低下につながったのかもしれない。首相が売りとする「聞く力」をどう生かしていくのかが問われている。
 国葬に関して、受け止めた国民の意見を「今後に生かす」としたが、どう反映させていくのか。国葬前に行われた国会の閉会中審査で、国葬の基準づくりを求められた首相は「内閣がその都度、総合的に判断する」と述べた。
 国葬後も同じ考えなら何を受け止めたのかが分からない。根拠も理由も曖昧なまま、国会にも諮らず、内閣が独断専行したことが批判されたのではないか。また、分断された世論をどのように修復していくつもりなのか。
 安倍氏の銃撃事件を契機に、政治家と教団のつながりが表面化した。加えて閣僚や幹部も含めた自民党の国会議員と教団の関係の根深さも問題になっている。首相は「説明責任を果たす」としているが、信頼回復にはまず、徹底した調査が欠かせない。
 国民生活に直結し、最も関心の高い物価高騰では、今月中に総合経済対策を取りまとめるとした。同時に円安はそのメリットを最大限引き出す対応を進めるとした。構造的な賃上げを実現するためには、物価上昇に見合うだけの賃上げだけでなく、労働移動の円滑化、人への投資策を進めるとした。
 相次ぐ値上げは、低所得者や収入が限られる年金生活者らを直撃した。ただ、世界的なインフレの中、日本だけが物価を抑制するのは難しい。首相は電力料金の負担緩和へ「前例のない、思い切った」対策を講じるとしたが、より幅広い対策が必要ではないか。
 首相は牧之原市で起きた園児の通園バス置き去り事故にも触れ、悲劇を繰り返さぬよう安全装置の義務化と支援措置を含む緊急対応策を約束した。迅速な実施を求めたい。また、流行「第7波」の全国的なピークは過ぎたとはいえ、新型コロナウイルス感染症への備えも気を抜くわけにはいかない。

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