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テーマ : シニア・介護・終活・相続

問われる当事者に寄り添う姿勢/どうする少子化 国と地方ができることとは⑥キュレーター・読者の意見【賛否万論】

 「どうする少子化 国と地方ができることとは」は今回が最終回です。政府が“次元の異なる対策”について詰めの精査、調整を続ける中、期待される施策効果や財源負担の手法を巡りさまざまな議論が起きました。少子化と人口減は国のあり方に関わる極めて大きなテーマですが、問題の原点は「子どもを望む人の思いをかなえる社会づくり」と明確です。政治行政は改めて、当事者に寄り添う姿勢が問われています。


 分断やめて「みんなの居場所」に
キュレーター 松浦静治さん(島田市)
任意団体Study Like Playing代表。20年間の小中学校教員生活の後、早期退職して地域で子どもを育む活動を実践。フリースクール、寺子屋、自然体験教室等を展開


 子どもを産み育てやすい環境を地域でつくるために、地域みんなが子育てに加わる仕組みをつくりたいと思っています。「子育て支援センター」や「児童館」「放課後児童クラブ」などがつくられていますが、それが逆に地域の分断を生んでしまっていると思います。「障がい者のための作業所」や「高齢者のためのデイサービスセンター」もそうです。よかれと思ってつくったものでしょうが、子どもは子どもだけ、障がい者は障がい者だけ、高齢者は高齢者だけという集団をつくってしまっていると思うのです。
 「みんなの居場所」とは、例えば、障がい者が作業している建物に、地域の高齢者がやってきて健康体操をする。そこへ子育て世代がベビーマッサージ教室にやってくる。障がい者が作業の休憩時間に一緒にお茶を飲む。学校が終わったら子どもたちがやってきて宿題をする。それを地域の大人が見守り、終わったら一緒に遊ぶ。そのようなつながりの中で、地域の人たちに信頼感が生まれ、互いに声をかけ合い、助け合える関係性をつくることができます。
 私はこの4月から金谷地区に一軒家を借りて、そこを「みんなの居場所ひだまりハウス」と名付け、「みんなの居場所づくり」を始めました。たくさんの地域の人に来てほしいと思っています。

こども〝家庭〟庁に違和感
 読者 YAMAさん(静岡市駿河区)50代
 こども家庭庁、その名称に違和感を覚えるし、家庭で育てなさいという圧力に感じます。
 子育ては家庭はもちろん、学校、社会、政治など、大人たちの役目です。問題は若者たちが未来への希望をなくしていることで、そんな社会にした大人たちの責任は重いと思います。
 子どもたちが信頼できる大人はいるのでしょうか。幼い頃から始まる右に倣えの教育、学校は先生の支配下で皆と同じことができなければ糾弾され排除される。子どもの自殺率は過去最高、精神的幸福度は世界ワースト2位。犠牲になっていく若い命と心。教育は平等と法で定められているならば大学までの教育費無償化、子どもが自ら教育を選ぶ権利の保障をしてください。
 多様性という言葉だけが独り歩きしている今、わが子が自分らしく生き生きと笑顔で生きていてくれたら、親はそれだけで生まれてくれてありがとうと思えます。それを次世代につなげていくことが一番大事なことではないのでしょうか?

独身者の負担増える?

 読者 まるしぇさん(富士市)59歳
 少子化を問題視する人は「社会の担い手が減る」という。ではそれで子どもを現在の2倍、3倍に増やしたらどうなるのか。その子どもだっていずれは老人になるのである。彼らを支えるために、またさらに子どもを増やせというのか。地球も宇宙も有限である。少ない人口でやっていくことを考えるべきではないのか。
 私は仕事がうまくいかないため、いまだに独身である。将来頼る子どもがいないが、あきらめている。
 結婚できて子どものいる人々は恵まれている。恵まれた人々に支援をして、恵まれない独身者から税や労働力の負担をさらに求めるのであろうか?

支出減らして「見合った暮らし」を


 キュレーター 杉山有希子さん(掛川市)イベント会社

「ママバトン」代表取締役。毎月実施している異業種交流会Giverは41回を迎えた。2男1女の母。小学校PTA運営委員の経験が4度ある

 「少子化対策」がテーマに挙がるとき、なぜ子どもが減ることがいけないのか?をまず考えます。
 対策する目的は何でしょう? 子どもを増やしたいということなのか? それとも、働き手や税収を確保したいということなのか? それを明白にしてから別々に考えないといけないと思います。
 単に子どもを増やすためだとするなら、晩婚化を減らし未婚者を減らし、婚活やお見合いの積極的な参加、婚姻関係がなくても子どもを持つことが許されるなどの法律改正、2人目3人目出産の補助金などの対策。そういうことになります。
 税収を確保したいということならば、子どもの増加に頼らず支出を減らすこと。
 統計で、子どもが減っていくことは何年も前から分かっているのだから、子どもを増やすことの対策ばかり机上でしているのではなく、「見合った暮らし」を地方でしていけばいいのではないですか? 立派な駅、自慢するために造る博物館は果たして今必要でしょうか?
 少子化対策とは「子どもを増やして」「働き手と税収を増やしたい」対策なんでしょうか?
 だとすれば、子育て中の私が言えるのはたった一つ。そんな世界に新しい命は産み落としたくない。
 子どもは授かり物。コントロールすることじゃないです。
 ずっと変わらない世界なんてない。子どもが増えることもある。減ることもある。見合った暮らしをしましょう。私はそう思います。

幼児期の一家だんらん 支援
 読者 座光寺明さん(磐田市)66歳
 岸田文雄首相が異次元の少子化対策(試案)を打ち出すと、すぐに財源論が噴出しました。財源として国債の発行を言うと「次世代の負担を増やしてはいけない」となります。しかしこのまま少子化が食い止められなければ次世代にかかる負担は莫大[ばくだい]なものになります。それならば財源は国債に依存しても、今できる手を打つべきだと感じます。
 まずは「子どもは欲しい」と思っている人への助成です。これこそ異次元の対応策で経済的な負担を軽減するべきです。具体的には1人目200万円、2人目500万円、3人目1000万円の出産祝い金です。子どもを出産しても祝い金があれば安心できるはずです。
 次に「結婚や子育てを望まない」と考えている人です。この人たちに「結婚や子育て」を無理強いしてはいけません。しかし、こう考える要因があるのです。学生などに聞くと幼児期に家族で楽しく過ごした経験が少ない。逆に一家だんらんを多く経験した人は結婚・子育てを希望する人が多い。家族と楽しいときを過ごした経験が少なければ、結婚や子育ては時間を拘束され、使える金銭も制限されると不安を感じるのは当然です。
 幼稚園、保育園、小学校の行事に特別有給休暇を付与し、実施しているところには助成金を与えるなどしてほしい。子どもが小学校を終えるまでは状況によってはまとまった休暇を取れるなどの仕組みも必要だと思います。特に性格の90%ができる幼児期に親子の関わりが大切なことを多くの人が認識してほしいです。
 最後に子育て家族へ寛容な心を持って接してください。赤ちゃんや幼子を連れている家族を見たら「ありがとう、がんばってね」という気持ちで。子連れで肩身の狭い思いなどはさせていけません。

 次回のテーマ
 「シニアの雇用 年齢で判断されるのはあり?」

 次回のテーマは「シニアの雇用。年齢で判断されるのはあり?」です。
 定年退職後に仕事を探しているシニアの人に取材すると「年齢を理由に面接も受け付けてもらえない。年齢差別ではないのか」と嘆く声が聞かれます。電気代など物価が上昇し、年金も思っていたほどもらえず、老後の資金に悩むシニアは少なくありません。
 ただ、高齢になれば健康状態に個人差があるのも事実。高齢者を雇う側の懸念も分かります。人手不足が深刻化し、シニアでも働ける環境を整えようという企業も現れています。ミスマッチを防ぐために何ができるでしょうか。仕事を求めるシニアや企業の声、識者の意見を紹介しながら考えます。

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