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テーマ : シニア・介護・終活・相続

ヤングケアラーの支援加速 静岡県がピアサポート導入 経験交え寄り添う

 大人に代わって子どもが家事や家族の世話をするヤングケアラーへの支援が静岡県内で加速している。県は本年度、かつてヤングケアラーだった元当事者が子どもの相談に応じるピアサポート事業を開始した。県の委託を受ける一般社団法人「ルミナス」(沼津市)の尾朝健太郎代表理事(53)は「ヤングケアラーとして接するのではなく、ふんわりと関わって、あの時助かったと思ってもらえるような支援にしたい」と在り方を模索する。

バーベキューをして会話を楽しむ参加者=10月上旬、長泉町
バーベキューをして会話を楽しむ参加者=10月上旬、長泉町
宮坂智恵子さん
宮坂智恵子さん
バーベキューをして会話を楽しむ参加者=10月上旬、長泉町
宮坂智恵子さん

 困り事を抱える子どもの手助けをしているルミナスは、ピアサポート事業として沼津、富士、御殿場の3市で月に2回以上、子どもたちが食事を楽しむ場を設けている。学習支援も行っていて、元当事者の家庭教師、宮坂智恵子さん(40)=沼津市=らが支援に当たる。
 ルミナスは2022年10月、ヤングケアラーを含む子どもたちが参加するイベントを長泉町内で初めて開いた。3歳から中学生までの約20人が参加。就労継続支援施設や放課後等デイサービスなどを行う団体の利用者や関係者もボランティアで集まった。子どもたちは元当事者を含む幅広い世代の人々と会話しながら、サツマイモ掘りとバーベキューを楽しんだ。
 尾朝代表理事は「身近にヤングケアラーがいることを多くの人に知ってほしい」と願う。一方で「本人や家族を傷つけず、自然に支援につなげるのが難しい」と課題も挙げた。
 県は21年冬に小学5、6年生と中高生を対象に行った実態調査の結果を受け、本年度、本格的に支援に乗り出した。「当事者同士で話をしたい」との意見を反映してピアサポートを導入。県の担当者は「子どもたちは(同じ経験をした人と)話すことで心が休まる」と事業の意義を強調する。

「地域ぐるみで発信を」 家庭教師の宮坂さん
 宮坂智恵子さんは、ギャンブル依存症の母親を持ち、貧困やいじめに苦しんだ経験を持つ。現在は「ミスどん底先生」を名乗り、学習指導をしながら子どもたちをケアしている。「(子どもが)自分から助けを求める手を挙げやすい環境づくりが大切」と訴える。宮坂さんは「困っている子は見た目では分からない」と指摘。子どもの中で「家の中のことを外に話してはいけない」という心理が働くため、(電話相談を受け付ける)専門ダイヤルもハードルが高く、暴力を受けている場合はなお、自ら発信することを恐れてしまいがちだという。
 子どもが自分から悩みを相談できる場をつくるには、学校だけでなく地域ぐるみで「理解してくれる大人がいること、支援を受けられる立場であることを伝えるべきだ」と指摘する。

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