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テーマ : シニア・介護・終活・相続

高齢者の労災リスク最小限に ヒヤリ・ハット共有、改善 体調管理で事故防ぐ【70歳の壁 シニア雇用を考える】

 シニアを雇用する上で企業が気にするのは、身体機能や認知能力の低下に伴う高齢者ならではの労災リスクだ。シニア雇用に力を入れる静岡県内の企業では、ヒヤリ・ハットの改善を徹底したり、従業員とのコミュニケーションを密にしたりして、労災リスクを最小限に抑える工夫をしている。シニアにとって働きやすい環境の整備は、年齢に関係なく誰もが働きやすい職場にもつながるという。


 運送業の浜名梱包輸送(浜松市浜北区)は65歳定年だが、継続雇用を毎年更新すれば最長86歳まで働ける制度がある。60歳以上でも積極的に採用する一方で労災事故対策を徹底する。
 倉庫で返品される荷物の整理作業を担当するパートの金指峰代さん(72)=同区=は週5日、午後1~4時に勤務する。荷物の入った箱を棚に運んでバーコードを読み込む仕事。重たい箱は若手従業員が担当してすみ分けし、「体力的には全く問題ない」と言う。
 同社はヒヤリ・ハット事例の共有と改善に社を挙げて取り組み、シニア従業員も例外ではない。金指さんは荷物を持ったまま倉庫内の階段を上り下りしてつまずきそうになった経験をヒヤリ・ハットの事例として報告し、小さな荷物でも階段を使わずリフトで昇降する方法に改善した。管理職は日常的な声掛けや熱中症対策などを通してシニア従業員の体調管理にも気を配る。
 採用を担当する硯田晃弘課長は「シニアを活用しないと人が足りない。本人の適性を見て仕事内容は変えている」と実情を明かした上で「ヒヤリ・ハットの改善はシニアを意識した取り組みではない。誰もが働きやすい環境をつくることでシニアも働きやすくなる」とも説明する。
 静岡労働局によると、労災事故は高齢になるほど割合が増える傾向がある。業種によって特徴は異なるが階段転落や転倒、腰痛などの事故が目立つ。ただ、皆野川順夫健康安全課長は「企業側の取り組み次第で労災リスクは低減できる。採用時、職場を見て対応できる仕事なのか見極めてもらうことも重要だ」と指摘し、国が策定した高齢者労災事故防止指針「エイジフレンドリーガイドライン」の活用を呼びかける。
 

 認知能力 試用で判断 静岡県内の警備業者 「不採用も理由伝える」
 シニア雇用が圧倒的に多い警備業の仕事は、体力とともに瞬時の判断力が求められる。高齢に伴う認知機能の低下リスクとどう向き合っているのか。県内の警備業者によると、試用期間中の実技の反応を見極めて適性を判断するケースが多いという。
 「怒らないで聞いてほしい。あなたに仕事を提供できない」―。試用期間を踏まえて不採用にする場合、採用担当者はそう言って正直に理由を伝えるという。
 この業者の従業員の約8割が65~75歳。採用時に面接で会話が成り立つか、受け答えがはっきりしているのかも参考にするが、認知判断能力は面接だけで見極めが難しい。研修などで実際に体を動かしてもらうと分かってくるという。
 事故に至らなかったが、70代後半の従業員が車両のアクセルとブレーキを踏み間違える「ヒヤリ・ハット」が起きたこともあった。採用後も体調変化のチェックは欠かさず、毎月最低1回は従業員に会って表情や反応を見る。「シニアには、いいことも悪いことも正直に伝えることでミスマッチを解消するしかない」と話す。

 

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