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テーマ : シニア・介護・終活・相続

高所得者の支払い、施設利用料上げ… 介護保険制度改正で負担増 地域格差加速 懸念も

 3年に1度見直される介護保険制度。2024年の改正で、介護職員の月6千円の賃上げや介護ロボットの積極活用などが決まったが、制度を利用する高齢者にはどのような影響があるのだろうか。介護に関する講演を行っている、介護施設情報サイト「ライフル介護」編集長の小菅秀樹さんは「負担は増える」と注意を促す。

介護保険料/介護保険施設の利用料
介護保険料/介護保険施設の利用料


 介護保険は、要介護者が適切な介護サービスを受けられるよう00年に始まった制度で、40歳以上の国民から介護保険料を徴収し、介護事業者らに報酬を振り分けている。今回の改正で国は①地域包括ケアシステムの深化・推進②自立支援・重度化防止に向けた対応③介護人材の確保と生産性の向上④制度の安定性・持続可能性の確保-を重点テーマに定めた。
 利用者への大きな影響として、小菅さんはまず、一人一人の支払い能力に応じて保険料が増減する「応能負担の強化」を挙げる。24年度から、年間420万円以上の所得がある65歳以上の介護保険料が引き上げられる一方、住民税非課税世帯などの低所得者の負担は軽減される。
 23年度末の時点で、所得420万円以上の対象者は約145万人。高齢者全体の約4%にすぎないが、定年延長や健康寿命の延伸に伴うアクティブシニアの増加で、今後は人数、割合共に増えることが見込まれる。
 また、「介護保険施設を利用する際の負担も大きくなる」と小菅さん。24年8月から、特別養護老人ホームをはじめとする介護保険施設の居住費が月1800円程度引き上げられるほか、25年度には病院と自宅の中間的施設として位置付けられる「介護老人保健施設(老健)」や「介護医療院」の大部屋を利用する場合、月8千円程度の室料負担が必要になる見通しだ。
 老健や介護医療院はもともと「在宅復帰を促す短期入所の役割が期待され、室料を徴収するのは適切でないとの考えから、料金は保険給付で賄われていた」と小菅さん。しかし、両施設とも長期入所者が多く、利用者の「主たる住まい」となっている実態を踏まえ、導入が決まった。
 小菅さんは「利用者側の負担が増えることで介護サービスが使いにくくなるという面は否定できない。東京などの大都市に人口が集中する中、地域格差が加速する恐れもある」と指摘。「保険を使えない分を家族がカバーするケースが想定されるが、正しい情報を集めて家族の負担が増えないよう介護に備えてほしい」と話している。

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