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テーマ : シニア・介護・終活・相続

熱海から静岡へ「被災者と共に」支援のバトン 相談員、経験つなぐ

 昨年9月の台風15号の被災者を支援する静岡市地域支え合いセンターが、一昨年の熱海土石流の被災者を見守り続ける熱海市伊豆山ささえ逢いセンターに支援のノウハウや住民の交流施設の運営手法などを学んでいる。災害の性質は異なるが、被災者の生活再建支援や孤立防止など両センターが取り組む課題は重なる。静岡側の「学びたい」思いに、熱海側は「経験を伝えたい」と応える。被災地から被災地へ、支え合いのバトンがつながっている。

被災者支援の手法について情報交換する静岡、熱海両市の相談員ら=4月下旬、熱海市内
被災者支援の手法について情報交換する静岡、熱海両市の相談員ら=4月下旬、熱海市内


 支え合いセンターは社会福祉協議会が中心となって被災者の生活相談や心身のケアを行う機関で、各地の被災地で運営されている。熱海市では土石流から3カ月後の2021年10月に設置された。避難生活を送る127世帯に相談員が訪問や電話で悩みを聞き、必要に応じて弁護士や専門機関につなげている。
 一方、静岡市のセンターは今年1月に開設され、みなし仮設などで暮らす世帯だけでなく、市の名簿に載っていない在宅被災者も支援している。相談員からの電話に「人と会話したのは1週間ぶりだ」と喜ぶ人もいれば、声をかけても「大丈夫、大丈夫」とだけ言い、床上浸水した自宅を修繕しないまま暮らしている人もいるという。
 「『大丈夫』という人にどうアプローチすればいいのか」「声をかけすぎるとかえって相手の負担にならないか」「支援が必要な人はまだいるはずだが、どうやって情報を掘り起こせばいいのか」-。悩みながら業務に当たる相談員らは4月下旬、熱海市を訪れ、被災者支援の“先輩”に対応策を相談した。
 同じような経験をしてきた熱海市の相談員らは「訪問の頻度は決めない方がいい」「センターで全ての被災者情報を集めるのではなく、税務や建築関係など市のさまざまな部署から情報が集まる仕組みづくりを」と助言。被災者ごとに支援計画書を作り、それぞれの課題や接し方などを相談員が共有したり、イベントや各種支援情報の申し込み先をセンターにして被災者と連絡を取るきっかけをつくったりと独自に編み出した手法も次々に紹介した。
 熱海市も熊本地震や西日本豪雨の被災地から多くのことを学び、試行錯誤を重ねてきた。土石流から1年10カ月たつが、センターの役割はまだまだ続く。原盛輝センター長は「一人一人に寄り添うということを改めて見つめ直しながら、被災者と共に前へ進んで行きたい。私たちの経験が少しでも静岡市の力になれば」と話した。静岡市の津野辺豪センター長も「熱海から学んだことを生かしながらトライアンドエラーを重ね、他の被災地に経験をつなげられたら」と語った。

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