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テーマ : シニア・介護・終活・相続

IT業界に障害者の力 プログラミング技術指導 浜松の支援事業所が実績 県内での採用促進へ意欲

 情報化社会の進展で、ITを活用した事業変革「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」を推進する企業などが増加し、専門エンジニアが不足する中、IT業界での障害者の活躍に期待が高まっている。静岡県内でも、就職を希望する障害者へ専門的なプログラミング技術の習得を支援する就労移行支援事業所が開所して実績を上げるなど追い風が吹く。

ITスキルの習得を支援する就労移行支援事業所で利用者に助言する若松杏副社長(右)=7月中旬、浜松市中区
ITスキルの習得を支援する就労移行支援事業所で利用者に助言する若松杏副社長(右)=7月中旬、浜松市中区

 「これまでは自分の考えを伝えられず、面接がうまくいかなかった」。自閉スペクトラム症(ASD)とうつ病に悩まされてきた男性(30)=掛川市=は学生時代の就職活動を振り返った。8月からは都内のコンサル会社のIT部門でアプリ開発などの仕事に就く。昨年、浜松市中心街に設立した事業所「就労移行ITスクール浜松」に通い、実践的なプログラミングの技術を学んだことがきっかけとなった。
 事業所を運営する福祉事業のRAMP(同市中区)の副社長若松杏さん(28)は「ASDや注意欠如多動症(ADHD)の方は対話が苦手な一方で、興味を持ったことへ強い集中力を発揮する傾向があり、IT業との適性は高い」と指摘する。同事業所では利用者3人が都内コンサル会社IT部門へ就職を決めた。
 「前職の事務では意思疎通がうまく取れず、働くことに悲観的だった」と語るADHDとASDの女性(27)=浜松市=もその1人。現在は「プログラマーは自分の特性に合った職業だと思える。仕事での成功体験を増やしたい」と前を向く。
 国の規定で義務付けられている障害者雇用の対象に、精神障害が2018年に加わったことを機に、都内で徐々に障害者を対象にしたIT業の求人が見られるようになった。一方で、県内企業はまだデジタル人材としての障害者の採用の実績は乏しい。
 静岡労働局職業対策課の和田了亮高齢・障害者雇用対策主任は「障害の有無にかかわらず、高い専門性やスキルを必要とすることは就職のハードルとなっている」と話す。客先の会社に常駐する勤務体系も多いため、障害の特性に対する理解が浸透していないことも、雇用の壁になっている可能性があるという。
 若松さんは、IT人材の育成、障害者雇用の促進といった社会課題解決の視点から、「デジタル技術習得支援とともに、障害者もエンジニアになれるという考えを静岡県内企業にも普及させ、障害者雇用の概念を変えたい」と語る。

 IT業界 障害者雇用率 産業別で最低値
 厚生労働省が発表した民間企業や公的機関で働く障害者の雇用状況(2022年6月1日時点)によると、全国の雇用障害者数は前年比2.7%増の61万3985人と19年連続で過去最高を更新した。
 従業員全体のうちの障害者の割合を表す実雇用率は2.25%と前年から0.05ポイント増加。産業別ではトップの医療・福祉業2.89%に対し、IT業は1.84%と最下位で、国が義務付ける2.3%の法定雇用率を下回る。
 経済産業省が19年に公表したIT人材需要に関する調査によると、IT人材の不足は年々増加し、30年は最大約79万人が不足すると予想されている。

 

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