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テーマ : シニア・介護・終活・相続

社説(2月28日)成年後見制度 利用者本位の改善急げ

 認知症や知的障害などで判断能力が十分でない人の権利を代理人が保護する「成年後見制度」の見直しについて、小泉龍司法相が法制審議会に諮問した。制度に対しては高齢化の進行でニーズの増加や多様化が見込まれる一方、一度後見人が決まると終了や交代が難しいなど、使い勝手がよくないとの指摘がある。利用者本位の改善が急務だ。
 政府は法制審での議論を踏まえ、後見人の期間制導入など柔軟な運用を可能にするため、2026年度までに民法など関係法令の改正を目指す。制度が00年に始まって以来、初の大幅な改正だ。本人の意向を尊重しながら暮らしを後押しするという制度の趣旨を踏まえた上での利用促進に知恵を絞りたい。
 制度は、本人や親族などの申し立てで家庭裁判所が後見人として選任した弁護士や司法書士、社会福祉士ら専門職や親族などが本人に代わり、財産管理や医療・介護の契約などを行う。法務省などによると、22年10月時点で65歳以上は約3600万人。このうち認知症の人は数百万人に上るとみられるが、同年末時点で後見制度の利用者は約24万5千人にとどまる。
 現行では、制度を利用すると事実上、亡くなるまで中止できない。専門職には報酬支払いが必要で、東京家裁が示した「目安」では通常業務の基本額が月2万円。管理する財産が多いと6万円になることもある。蓄えもなく、年金生活の人にとっては2万円でも大きな負担ではないか。
 法制審では一定の期間や、相続の取り決めなどライフイベントの完了時点で利用を終了できる仕組みの導入を検討する。利用の伸び悩みを解消する制度設計に向けた大きなポイントだ。関係者の期待も大きい。報酬の基準を明確にすることも求められる。
 遠方への転居や、資産を使い込まれたなど、限られた理由でのみ後見人の辞任や解任を認める現行ルールの在り方も論点だ。日常生活の支援も後見人の重要な役割だが、業務は財産管理に偏りがちになっているという。「身の回りの世話が必要になったので、弁護士から福祉関係者に引き継ぐ」など、交代を柔軟に認めることの是非も慎重に探ってほしい。
 後見人には財産管理をはじめ強力な代理権があり「後見人の反対で、利用者が望む家族旅行に行けなかった」といったトラブルも起きている。利用者の判断能力に応じ、代理権を制限するかどうかも議論の対象となる。
 利用者の権利と安心な生活を守るという、制度の根幹にかかわる問題だ。後見人が本人の思いを尊重し、適切に支える環境を整えなければならない。

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