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テーマ : シニア・介護・終活・相続

迫る「コロナ」打つ手なく  母親感染で濃厚接触認定、発症… 協会助けで息子と入院【障害者と生きる 第3章 成人㊦】

 2月2日午前2時ごろ、渡辺裕之さん(58)=静岡市清水区=が母美奈江さん(89)の様子を見に行くと、ベッドから転げ落ちて眠っていた。何かおかしい。熱もある。救急車を呼ぶと、救急隊から家族も同乗をと求められた。しかし、家には隼(しゅん)さん(24)がいる。1人にはできない。訪問看護師も呼べず、搬送は諦めるしかなかった。

(提供写真)防護服を着込み、手袋とフェースガードを装着して隼さんを介護する渡辺裕之さん(裕之さん提供)
(提供写真)防護服を着込み、手袋とフェースガードを装着して隼さんを介護する渡辺裕之さん(裕之さん提供)

 夜が明け、ようやく訪問看護師を呼ぶことができた。隼さんを任せ、美奈江さんを市内の病院に連れて行った。PCR検査の結果、新型コロナ陽性。中等症で緊急入院した。
 「1人で2人を介護していると、体調が急変してもすぐに病院に行けないことがあるんです。夜間に搬送できていれば母ももう少し容体が良かったかもしれないんですけど…」
 翌3日、裕之さんは保健所から濃厚接触者として7日間の自宅待機を指示された。隼さんは美奈江さんと接触がなく、濃厚接触者には認定されなかったが、平日通っている通所施設は2週間通えなくなり、ヘルパーと訪問看護師は待機期間中の利用を断られた。
 濃厚接触者の裕之さんが隼さんの介護を担うことには不安があった。「呼吸器疾患があり、肺炎にも5回ほどなったことがある隼がコロナに感染したら命を落とすかもしれない。自分が発症してからでは遅い」
 心配になった裕之さんは隼さんを預かってくれる医療機関や入所施設を探した。保健所にも事情を話して相談したが、「保健所ではどうしようもできない」との回答。解決策は見つからなかった。
 仕方なく防護服を着て、手袋とフェースガードを装着して隼さんの介護をすることにした。「頼む。感染していないでくれ」―。
 願いは通じなかった。6日、自身の陽性が判明した。保健所に再び連絡を取るも待機の指示に変わりはない。最後の望みをかけ、市障害者協会に協力を頼んだ。協会員らが清水区障害者支援課に働きかけるなどして7日、裕之さんと隼さんは市内の病院にようやく入院できた。
 「家族の誰かがコロナになったら打つ手がないことは分かっていました。だから行政にも相談はしていたんです。でも結局答えが出ないまま、その日を迎えてしまいました」
      ◇
 隼さんが生まれてから約24年間。裕之さんに壁を乗り越えてきたという思いはない。困難に直面するたび、策を探したけれど見つからなかった。答えを求め、今日も暗闇をさまよっている。

 <メモ>静岡市障害者協会 2005年に発足し、17年に認定NPO法人となった。市内の身体、知的、精神、発達障害や難病の各団体が集結し、障害の種別を超えて相互の活動支援、社会参加の促進、啓発など事業を行う。

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