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個性派「独立系書店」出店ラッシュ 静岡県東部の交流拠点に

 ネット販売などに押されて大型書店の閉店が相次ぐ一方、「独立系書店」と呼ばれる店主の個性が際立つ小規模型書店の開業が今秋、静岡県東部で相次いでいる。立ち飲み屋やギャラリーなどを併設し、地域の交流拠点として存在感を示し始めている。

カウンターで立ち飲みを楽しみながら、本を選ぶ人と菅沼祥平さん(左端)=9月初旬、三島市のヨット
カウンターで立ち飲みを楽しみながら、本を選ぶ人と菅沼祥平さん(左端)=9月初旬、三島市のヨット
店主江本典隆さんが選んだ新刊が並ぶ。奥にはギャラリーも=9月初旬、沼津市のリバーブックス
店主江本典隆さんが選んだ新刊が並ぶ。奥にはギャラリーも=9月初旬、沼津市のリバーブックス
カウンターで立ち飲みを楽しみながら、本を選ぶ人と菅沼祥平さん(左端)=9月初旬、三島市のヨット
店主江本典隆さんが選んだ新刊が並ぶ。奥にはギャラリーも=9月初旬、沼津市のリバーブックス


 沼津市下本町では9月初旬、会社員江本典隆さん(45)が「リバーブックス」を開店した。江本さんは昨冬、空きビル活用を通じて街の活性化を促す人材を育成する市の担い手育成業務委託事業の一環で、事業開発スクールに参加。発表した事業計画が最優秀賞に輝き、20年以上空き物件だった元洋裁店を自ら改装した。
 営業時間は週末と金曜夜。棚には写真集や画集、暮らしや料理、建築、文化など江本さんの選書眼が光る書籍が並ぶ。奥にはギャラリーを備え、窓際では不定期で沼津クラフトのビールを販売。飲食の間借り営業スペースとしても貸し出す予定だ。江本さんは「沼津は文学館が多い町なのに書店が減っている。本を買うだけでなく、地域の人が気軽に集まれる場にしたい」と力を込める。
 三島市北田町では9月初旬、書店「ヨット」が仮オープンした。都内で本のデザインや販売に携わった裾野市出身の菅沼祥平さん(32)がUターンし、今春閉店した書店の跡地に設けた。生活や旅、詩集、短歌、民芸などの選書のほか、少人数で制作され一般の書籍流通ルートに乗っていない「ZINE」「リトルプレス」などと呼ばれる出版物も多く扱っている。
 目を引くのは、入り口右側にあるカウンター。お酒を提供し、立ち飲み屋としても営業する。9月初旬の開店記念イベントでは、DJによる音楽が流れる中、タコスやワインが提供され、多くの20~30代でにぎわった。菅沼さんは「都内の立ち飲み文化を持ってきたかった。本を買わなくても気軽に1杯飲みに来てほしい」と呼びかけた。


出版流通の環境変化 大規模店は閉店相次ぐ
 沼津市では、2022年5月にマルサン書店仲見世店、23年3月にはTSUTAYA沼津学園通り店が相次いで閉店した。大規模書店が減る中、店主の選書が光る独立系書店が開店する背景の一つに、出版流通を取り巻く環境変化がある。
 大規模書店は、出版社から出版取次会社を介して新刊を調達するのが基本。大手取次から仕入れるには、多額の保証金を納める必要があり、個人書店開業のハードルになっていた。
 ところが近年は雑誌不況や輸送費の高騰に伴い、昔ながらの大量流通・大量返品のシステムが崩壊しつつある。一方、ここ数年で1冊からの取引が可能な中小取次や、直接書店と取引する出版社も登場し、店主が選書する個人書店を出店しやすくなっている。
(東部総局・菊地真生)

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