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テーマ : 焼津市

浜岡原発全炉停止13年 広域避難計画、複合災害への想定甘く 11首長アンケート

 政府の要請で中部電力浜岡原発(御前崎市佐倉)が全炉停止して14日で13年を迎える。元日の能登半島地震では緊急輸送路の寸断が相次ぎ、大規模地震と原発事故の複合災害が起きた場合の広域避難の難しさが露呈した。静岡新聞社が浜岡原発の半径31キロ圏11市町の首長に対して実施したアンケートでは迂回(うかい)路の検討不足などが明らかになった。県の広域避難計画を含めて複合災害に対する想定の甘さが浮かんだ。
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 迂回路を設定しているか尋ねた質問では、御前崎、藤枝、島田、磐田、吉田の5市町が「検討中」と回答した。島田市は「県と国がアクセス道路について代替路線などを検討するとしていて、市でも併せて検討する」とした。御前崎市は「道路状況の悪化や避難に要する時間を考慮する必要がある」と課題を挙げた。
 「設定している」は焼津市のみだが、同市の計画に記載された主な避難経路は東名高速道といった主要道路だけだった。森町は「町内の緊急防護措置区域(UPZ)圏外へ避難する」として、「設定する必要がない」を選んだ。
 牧之原、菊川、掛川、袋井の4市は無回答だった。袋井市は「県の計画が不十分で具体的に検討できない」と指摘。牧之原市は「道路耐震化の強化と国道150号バイパスの早期事業着手が必要」、掛川市は「迂回の候補ルートが多数ある」などと説明した。
 県と11市町の広域避難計画は「南海トラフ地震などとの複合災害も考慮する」と明記しているが、複合災害への対応が反映されているのは広域避難先に関する部分のみ。避難経路は「避難の際には道路の状況を考慮し、県が関係機関と調整の上、決定する」「避難元市町内の避難経路は(中略)避難元市町の計画で定める」などの記載にとどまる。
 県原子力安全対策課の神村典浩課長は「道路寸断や地震で指定避難所が使えないなど、複合災害を踏まえた計画にはまだなっていない」と認めた上で、「寸断リスクの抽出や迂回ルートの検討、道路啓開の優先順位などを市町と一緒に考えていく」と述べた。
 (社会部・中川琳)

再稼働容認、今年もゼロ 全市町「その他」選択
 中部電力浜岡原発周辺の11市町首長アンケートで、同原発が新規制基準適合性審査に合格した場合、再稼働を容認すると回答した市町は今年もなかった。ただ、昨年までは再稼働に否定的な考えを示す市があったが、全市町が「その他」を選択。電力安定供給に向け原子力発電の必要性を認識する一方、原子力災害広域避難計画の実効性を疑問視する声が目立ち、再稼働に対する判断を決めかねている現状が浮き彫りになった。
 昨年、唯一「いいえ」と答えた藤枝市。宇野孝伸危機管理監は「賛否を明確に示すことは難しいが、求める意見は変わっていない」と説明する。従来通り「福島第1原発事故を完全に収束させ、国と中電が進める安全対策が検証され、地域住民の合意、周辺市町の同意、理解を得られなければ再稼働はあり得ない」とした。
 御前崎市は電力安定供給や温暖化対策の観点から「安全性確保を大前提とした上で原発の活用は意義がある」と指摘。一方、牧之原、菊川、島田市、森町は、原発重大事故時の広域避難計画や使用済み核燃料の処理が確立されていない点を課題に挙げた。
 (御前崎支局・市川幹人)

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