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テーマ : 裾野市

指先が生み出す藍の模様 染色家 水口よお子さん(裾野市)【表現者たち】

 古くから日本人の暮らしに根を下ろし、愛され続けてきた藍色。染色家水口[みなくち]よお子さん(75)=裾野市=は、「ジャパン・ブルー」とも呼ばれるこの豊かな色相に、20年以上前から魅せられている。「身にまとっても爽やか。天然藍そのものが持つ力に支えられてきた」と実感する。

生地を糸やロープでしばりながら、絞り染めの模様を作っていく水口よお子さん。左後ろのタペストリーは国展国画賞受賞作の「春光」=裾野市(東部総局・田中秀樹)
生地を糸やロープでしばりながら、絞り染めの模様を作っていく水口よお子さん。左後ろのタペストリーは国展国画賞受賞作の「春光」=裾野市(東部総局・田中秀樹)
日々丹精し、「藍の華」が咲いた藍がめ
日々丹精し、「藍の華」が咲いた藍がめ
生地を糸やロープでしばりながら、絞り染めの模様を作っていく水口よお子さん。左後ろのタペストリーは国展国画賞受賞作の「春光」=裾野市(東部総局・田中秀樹)
日々丹精し、「藍の華」が咲いた藍がめ

 水や光、雲、植物の花。自然界の事象にイメージを重ね、独特の絞り模様を生み出す。連続する藍と白の対比は、万華鏡のように見る人を奥深くへ誘う。
 小学校教員をしていた50歳のころ、沼津市内の展覧会で藍染めを気に入り、教室に通うようになった。「もともと手仕事が好きだった」。程なく教職を辞し、藍染めの創作活動に打ち込んだ。
 名産地として知られる徳島から取り寄せた原料、阿波藍の「すくも」に、木炭のあくやふすま、日本酒を加え、発酵を促す。「1日何十回も、かめの中をかき混ぜる。藍建ての工程は子守みたい」。表面に現れた「藍の華」が染めの合図。染め布を染み込ませては、繰り返し空気や水に触れさせ、青色を濃くしていく。「どこまで染まるか、濃淡もにじみも最後は藍任せ。天然染料は、自分の意図を超えていく」
 日本には、絞り染めの伝統的な模様が多数ある。水口さんは「先人の美しい模様を組み合わせながら、独自性をいかに出すか試行錯誤」という。生地を折り畳み、糸でしばったり、縫ったり。仕上がりを緻密に想像しながら、模様を作っていく。
 綿や麻など布の種類やその厚さによっても、藍色の鮮やかさ、濃さ深さが変わる。年1回、国展の出品作には、新たな工夫があることを自らに課してきた。2021年、最高賞の国画賞を受賞したタペストリー「春光」で国画会準会員となり、作家としての道筋を照らした。「藍という自然の命をいただいて創作できる。その恵みを生かし、人に寄り添う形にしていきたい」
 (教育文化部・岡本妙)

 「水口よお子展 天然藍染 手絞りの世界」は9月4~18日、さんしんギャラリー善(三島市)で開く。

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