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テーマ : 裾野市

チャノキ 中国から伝来、文化醸成も【しずおかに生きる植物 冬③】

 日々お茶を楽しむことは私たちの生活に欠かせない。ここ静岡の地にとって富士山を借景に茶畑の連なる風景は、古里の風景そのものである。しかし、実はわが国にチャノキの自生は無く、栄西禅師が中国から1191年に茶を持ち帰り、寺院に植えたのが始まりとされる。そして一般庶民にも茶を飲む慣習が広がるきっかけとなったという。

(左)椿に似た白い花を咲かせるチャノキ=裾野市
(左)椿に似た白い花を咲かせるチャノキ=裾野市
(右)富士山と茶畑の風景は県民になじみ深い=裾野市
(右)富士山と茶畑の風景は県民になじみ深い=裾野市
(左)椿に似た白い花を咲かせるチャノキ=裾野市
(右)富士山と茶畑の風景は県民になじみ深い=裾野市

 チャノキは中国南西部、ラオス、ミャンマー北部で自生が確認されている。その薬用から近隣地域に栽培が広がり、東は日本へ、西はヒマラヤの麓ダージリンやアッサムへ、さらにスリランカへ広がった。これらの地域は温暖で降水量に恵まれた照葉樹林域である。
 わが国では不発酵の緑茶として、中国では半発酵のウーロン茶として、インド北部やスリランカでは発酵させ紅茶として愛飲されている。いずれも同じチャノキであることはよく知られている。
 嗜好[しこう]飲料として活用されるチャノキにはカフェインやタンニンが含まれる。カフェインを含む植物はごく少なく、他にコーヒーノキ、カカオノキ、マテノキがある。カテキンや豊富なビタミン類を含み、抗菌作用なども知られる。人々が古くからチャノキの有益性に気づき、愛飲してきたのには感動さえ覚える。
 さらに、日本では愛飲にとどまらず「茶の湯」の文化として根付いた。かつて来日したヨーロッパの人々は茶を飲むだけでなく、精神的な文化であることに驚きを持って報告している。
 さて一服、心静かに茶の風趣を味わってはいかがだろう。
 (文と写真・菅原久夫=富士山自然誌研究会長、長泉町)

 

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