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テーマ : 選挙しずおか

社説(4月25日)統一地方選 低投票率どこまで 揺らぐ民主主義と自治

 歯止めがかからない投票率の低下、無投票で顕在化する政治家の「なり手不足」。統一地方選が浮き彫りにしたのは民主主義と地方自治の骨格が揺らいでいる現実だ。
 前半戦に静岡県で行われた県議選と静岡、浜松の両政令市長選の投票率はいずれも50%を割り、過去最低を更新。後半戦では富士宮、小山、清水の3市町長選と7市議選、3町議選があり、全選挙の投票率が前回選を下回った。3市町長選とも過去最低で、富士宮市、清水町の首長選は初めて50%を切った。県議選は34選挙区のうち無投票が15選挙区に上った。
 生活に身近な選挙を過半数の有権者が棄権する。特に若年層の選挙離れは顕著で、近年は4人に3人が投票しない。若者が当事者となる少子化対策や全世代型社会保障改革がヤマ場をむかえる中、極めて深刻な事態だ。

 前後半を通じ、新聞紙面や選挙公報、街頭演説で見聞きできた各立候補者の訴えは、新型コロナウイルス禍や物価高で地域の暮らしや経済の立て直しがいかに至難かを明示していた。住みよい地域にする重責を担うリーダーを選ぶ1票の選択は、有権者一人一人が、自分が生活する自治体の課題を主体的に考える機会でもある。学校教育の役割を含め、あらゆる対策を駆使して選挙の意義を学び、政治参加の機会を増やす必要がある。
 世代別で若年層の低投票率傾向が常態化すると、国の経済成長と発展に尽力してきた高齢世代の成功体験と規範意識に政策決定が左右される事態を招く。分配政策重視の借金財政が続きやすく「シルバー民主主義」と称される。社会保障政策の基盤は現役世代が労働により生みだす価値であり、借金財政の弊害はいずれ全世代に及ぶ。
 若年層の政治離れは、1票の選択により、政治の力で暮らしを変えることができるとの実感を持てないからとの指摘がある。
 若者が主体となり、政治参加の機会を拡大するため被選挙権年齢を下げるべきとの主張がある。投票する権利は18歳以上なのに、立候補する人は参院選と知事選が30歳以上、その他の選挙が25歳以上とした規定の根拠は何か。立候補に必要な供託金の在り方を含め、広範に議論する時期に来ている。
 少子高齢化が国の発展を阻害するのは明らかで、非正規労働など困窮する若者の声を政策立案に反映させる仕組みを再構築すべきだ。

 選挙改革は暗中模索の状態だが、統一選での光明は女性議員の増加だ。男性優位の政治風土の中、女性の視点で、埋もれた声を政治に届けてほしいとの期待が現れた。
 全国41道府県議選で過去最多の316人の女性議員が誕生した。静岡県の県議選(定数68)でも過去最多の11人が当選した。全34選挙区のうち9選挙区に女性が立候補し、中でも定数4の静岡市清水区では戦後最年少の当選を含む女性3人が全員当選し、上位を占めた。
 内閣府によると、各国の女性国会議員の割合は1980年代、日本、米国、英国、フランスとも5%前後で大差なかった。ところが2000年代に入ると各国で女性比率が高まり、22年時点で米英仏とも30%前後まで増加していった。日本は10%以下でほぼ横ばいだ。
 全国41道府県議選の改選議席の党派別女性比率は、共産が57・3%で突出して高い。立憲民主が27・0%と続き、国民民主が19・3%、公明が16・5%、維新が14・5%など。総定数の過半数を確保した自民党は、当選者1153人のうち女性は68人で5・8%にとどまる。
 データによれば、長く政権を担う自民党が女性立候補者の擁立に力を入れなければ事態は改善しないのは明らかだ。解散総選挙が取りざたされる中、岸田文雄首相のリーダーシップに期待したい。

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