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テーマ : 選挙しずおか

核ごみ 2町村で候補地 北海道寿都町、神恵内村 次段階調査へ移行「可能」 最終処分場選考で報告書案

 原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は13日、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で実施した全国初の文献調査の報告書案を、専門家で構成する経済産業省の作業部会に提示した。両町村とも、最終処分地の選定事業で次の段階の概要調査に進むことが可能と判断した。

概要調査の候補地
概要調査の候補地
記者会見する北海道神恵内村の高橋昌幸村長=13日午後、北海道神恵内村
記者会見する北海道神恵内村の高橋昌幸村長=13日午後、北海道神恵内村
概要調査の候補地
記者会見する北海道神恵内村の高橋昌幸村長=13日午後、北海道神恵内村

 報告書案では、寿都町の全域と神恵内村の一部が概要調査の候補地とされた。全国で文献調査を受け入れたのは両町村だけにとどまる。鈴木直道知事は13日、概要調査に「反対の意見を述べる」とコメントを発表。次段階への移行が実現するかどうかは不透明だ。片岡春雄町長は同日、取材に対し「(文献調査を受け入れる)他の候補地が出るまでコメントは控える。国は10カ所程度、候補地が出るように努力してほしい」と話した。林芳正官房長官は記者会見で「全国の自治体を訪問するなど取り組みを強化している」と述べた。
 文献調査は2020年11月に両町村で開始。期間は当初2年程度とされたが、既に3年以上が経過。今後も部会などで複数回の議論を重ねる。正式に報告書がまとまれば、3段階ある処分地選定プロセスの第1段階が終了する。概要調査は現地で地面を掘削する。
 報告書案では公的機関の地質図や論文、鉱山の坑道図面など、寿都町で延べ851件、神恵内村で延べ719件のデータを引用した。
 経産省の基準では、活断層や火山、浸食などで影響を受ける恐れが高く、概要調査に明らかに適さない場所を避ける。具体的には、13万~12万年前以降の活動が否定できない活断層の断層面や、258万年前以降に活動した火山から約15キロ圏内などが該当し、機構はデータを基に、除外する場所を特定した。
 報告書案では、寿都町は、全域を概要調査の候補地とした。南にある断層や鉱山跡などを今後の調査の注意点に挙げた。
 神恵内村は、積丹岳の山頂から約15キロに村の大部分が入り、候補地は南側の一部に限定される。ただ火山活動の中心部が詳しく分からず、適地と不適地の境界は明確でないとの説明も付けた。両町村の候補地には陸域のほか、海岸線から約15キロの海底も含めた。
2町村、住民投票に慎重  「説明が足りない」「町が分断された」-。原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地を巡り、文献調査の報告書案で次段階の調査が可能との判断が示された北海道寿都町と神恵内村では13日、住民に戸惑いが広がった。掘削を伴う「概要調査」に進むのかどうかが焦点だが、2町村の首長はそろって住民投票実施には慎重な姿勢を示した。
 積丹半島に位置する人口約750人の神恵内村。高橋昌幸村長は13日の記者会見で「村民の間でそれなりに情報の共有がなされている」と強調しつつも、概要調査を受け入れるかどうかには言及を避けた。村民の意向を問う住民投票については「一つの方策」と述べるにとどめた。
 60代の住民男性は「計画の説明が不十分で、分からないことが多い。特に安全性が不安だ」と困惑気味に話した。
 寿都町の片岡春雄町長は共同通信の取材に「多くの人がどう判断するか聞いて、反対が多ければ(概要調査には)いかない」と語ったが、住民投票を行うには、他の候補地が現れた上で住民向け勉強会を開くことが条件だとの考えを改めて示した。
 地元では町の分断を心配する声が少なくない。21年の町長選で、調査への応募を主導した片岡氏が当選したが、反対派と票が拮抗(きっこう)した。「人間関係のトラブルになるので、表では意見を言いにくい」(70代男性)との声が漏れ、今もしこりが残ることがうかがえる。
 町の衰退を懸念する意見も根強い。日本海に面した寿都町はかつてはニシン漁で栄えたが、60代の漁師の男性は「(温暖化の影響などで)水揚げ量が不安定になっている。国からの交付金は魅力的だ」とため息交じりに語った。

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