裏金直撃 薄氷の１勝 自民 前橋、京都市長選 保守地盤敗北 ３補選に影【表層深層】
自民党は４日の前橋、京都両市長選を１勝１敗で終えた。派閥の裏金事件が直撃し、歴代首相を輩出した保守地盤が強固な群馬で敗北。京都は、共産党の実質的な支援を受けた新人の猛追を許し、薄氷の勝利だった。内閣支持率は２０％台に沈んだままで、「裏金国会」では野党の追及が続く。衆院３補欠選挙、東京都知事選といった今後の重要選挙に影を落とす。
「想定内だ」。激戦から一夜明けた５日、自民党幹部は１勝１敗の結果について平静を装った。ベテラン議員も「裏金国会の渦中に１勝できたのだから御の字」と語る。
おきゅう
実は１月３１日、小渕優子選対委員長ら幹部が党本部に集まり、両市長選の情勢を分析。「２０２０年の前回選で保守が分裂し、しこりが残る前橋は厳しい」。そんな共通認識が出来上がった。群馬県連会長でもある小渕氏は応援に入るのを見送り、最終盤は諦めムードが漂った。
京都も陣営関係者は「気が気でなかった」と明かす。４年前は自民推薦の現職が約２１万票を獲得し、共産系候補に５万票近い差をつけたのに対し、今回は約１万６千票差。裏金事件の逆風は明らかだ。
小渕氏は４日夜「京都市長選で勝利した意義は大きく、今後の選挙に向けた弾みになる」とコメントした。しかし重鎮は小渕氏の父の恵三氏、親子の福田赳夫氏と康夫氏、中曽根康弘氏の計４人の首相を生んだ群馬での負けを重く受け止め、ぼやく。「おきゅうを据えてやろうという動きがあったんだよ」
深手
野党は、裏金事件をてこに自民にさらに深手を負わせようと躍起だ。
「長期政権を捨てる覚悟はあるのか」。立憲民主党の岡田克也幹事長は５日の衆院予算委員会で、４５分間の質疑を「政治改革」に特化。リクルート事件後の改革を引き合いに、首相の熱量をただした。
首相は「何としても強い覚悟で実行するのが私の責任だ」と語気を強めた。ただ自民の政策活動費の使途をただされると一転、「個人のプライバシー、企業団体の営業秘密を侵害するという不都合が生じる」と腰が引けた。
岡田氏は終了後、記者団の前で「言葉は躍るが中身を伴っていない。覚悟が全く感じられない」とあきれた。
岸田離れ
裏金事件を機に「岸田離れ」はじわり広がる。３、４両日に行った共同通信世論調査で、内閣支持率は昨年１１月から４回連続で２０％台に落ち込んだ。自民支持層の支持率は５５・２％で、１月調査に比べ５・６ポイント下落。逆に不支持率は８・４ポイント増の３２・９％だった。
連立を組む公明党幹部は「これまで自民党に投票していた人が、今は票を入れる気がなくなっている証しだ」と憂う。
この流れを止めないと「前橋市長選の再来」（閣僚経験者）を招きかねない。３月に熊本県知事選、４月に衆院東京１５区、島根１区、長崎３区の３補選を控え、７月の東京都知事選へと続くからだ。勝敗は首相の政権運営や衆院解散戦略を左右しかねない。
当の首相。予算委を終えると、国会内で熊本県知事選と島根１区補選の立候補予定者に向き合った。政権浮揚の展望は見えず、困難な選挙が続く中、激励の言葉は一言だけだった。「頑張ってください」
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