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テーマ : 選挙しずおか

視座(10月10日)首相、年内の衆院解散困難に 権力維持よりまず政策

 来年9月の自民党総裁選をにらみ、衆院の解散・総選挙の時期を模索していた岸田文雄首相だが、20日召集の臨時国会で経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算の成立を優先させる方針を固めたと報じられた。補正予算の成立は11月後半以降と見込まれる。12月は24年度予算編成や税制改正論議が控えている上、外交日程も詰まっているため、事実上、衆院解散を打つのは困難で、年内の解散はなくなったとの見方が強まっている。
 今月4日で政権発足から2年となった岸田首相が、総裁選での再選を確実にするには、その前のどこかの時点で国民に信を問い、勝てないまでも現状維持か大きく議席を減らさないことが求められる。だが、共同通信の世論調査によると、岸田内閣の支持率はここしばらく、30%台が続き、9月の内閣再改造でも大きく上向くことはなかった。経済優先の姿勢を強めて国民の支持を取り戻したい思惑が透けるが、現状のまま選挙に打って出れば大きな傷を負いかねず、解散を先送りせざるを得ない状況に追い込まれたとも言える。
 結果的にせよ、岸田首相の権力維持のための選挙より、経済対策を優先することは歓迎したい。総裁選前に解散できなければ、首相の求心力が低下して再選が難しくなるとされるが、的確な政策を講じれば、国民の支持につながる可能性はある。重要なのは、物価高騰の直撃で疲弊する国民生活の改善と将来不安の払拭に向け、どれだけ実効性のある施策を打てるかだ。まずは取りまとめる経済対策の中身が問われる。
 岸田首相は9月に、物価高への対応や賃上げ・投資を経済対策の柱とする方針を表明したが、国民の負担感が増す中で効果は見通せない。ここにきて岸田首相やほかの自民党幹部が相次いで減税に言及しているのは総選挙を意識してだろう。とはいえ、厳しい財政状況下で国民が負担軽減を実感できるほどの減税に踏み切れるか疑問だ。インボイス制度の10月導入や、マイナンバーカードと健康保険証を一体化するマイナ保険証の問題など、国民の間に反対が根強い施策に理解を得られるかどうかも、政権の今後を左右するだろう。
 年内解散を見送った場合、年明けから総裁選までの間に解散を打てるタイミングは限られる。候補になるのは年明けの通常国会冒頭か24年度予算の成立後、来夏の国会会期末というところだ。ただし、通常国会冒頭だと予算成立が遅れて批判を浴びかねず、予算成立後の4月も予算執行に影響が出る可能性がある。会期末では総裁選に近づき過ぎるため、残りの総裁任期がわずかで再選も不透明な岸田首相が解散することへの疑念が噴出しかねない。年明け以降の解散はどのタイミングでも、大きなリスクを覚悟しなければならない。岸田首相は相当悩むだろう。
 岸田内閣の支持率は21年10月の政権発足以降、しばらく60%前後で推移していた。ところが、22年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員の関係がクローズアップされて低下。マイナカードを巡るトラブルや閣僚らの不祥事が追い打ちをかけた。外交などで評価を得ても、身内の失策で帳消しにすることを繰り返している。岸田首相は政権内部を引き締める必要もあるのではないか。
(論説委員長・橋本和之)

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