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テーマ : 選挙しずおか

派閥収入 組織ぐるみ 集金まい進、高い利益率 自民パーティー券売り上げ還流【表層深層】

 自民党派閥の最大の収入源である政治資金パーティーを巡る不透明な金の流れに疑念が向けられている。売り上げの一部を議員側にキックバックした疑いが浮上した安倍派をはじめ、各派閥は所属議員にパーティー券の販売ノルマを課し、集金にまい進させる。開催経費は低く抑え、高い利益率を実現する「組織ぐるみの金集め」の実態が明らかになりつつある。

自民党派閥パーティー収入の流れ
自民党派閥パーティー収入の流れ


 紋切り型
 「政府の立場として答えは差し控える」。政治資金収支報告書に記載しないキックバックによって、1億円規模の裏金の可能性が浮上した安倍派。事務総長を約2年務めた松野博一官房長官は1日の記者会見で、矢継ぎ早に見解を問われたが、紋切り型の答弁に終始した。自民6派閥の収入は、大半をパーティー券売り上げが占める。2022年分の政治資金収支報告書によると、森山派は9割超。麻生、岸田、二階、茂木各派は8割前後。安倍派は5割を超えた。
 パーティーは主に平日夜、ホテルの宴会場で開かれ、1枚2万円が相場の券を購入した企業・団体の関係者や個人が参加する。主要派閥は1回の参加人数が3千~5千人になることもざらで、安倍派は新型コロナウイルス禍の22年5月、東京都内でのパーティーで9480万円を稼いだ。
 ただ、この金額は6派閥の中で5番目。最大派閥でありながら、麻生派の半分にも満たない。党関係者は「実際の売上額と異なるのではないか」といぶかる。

 経費抑制
 販売ノルマは議員の立場で異なる。関係者によると、どの派閥も当選回数が少ないほど低く、多選のベテランや閣僚経験者ほど高い。
 安倍派で最もノルマが低いのは、衆院当選1回の議員で60万円。閣僚経験者は400万円以上で、高木毅国対委員長や松野氏ら有力者「5人組」は500万円を超す。最も高いノルマは750万円に上るという。
 派閥によって違いはあるが、ノルマ以上に売り上げた場合、派閥から議員側にキックバックされるという。派閥や議員側の収支報告書に記載しなければ出入り不明の裏金となり、議員自身の収入となり得る。党中堅は「自分の財布に入るから、必死で売ってきた」と明かす。
 高い利益率を確保するため、経費抑制にも励む。パーティー出席者にビュッフェ形式で提供する飲食物などの経費を差し引いた額が利益となるため、閣僚経験者は「安価な唐揚げやフライドポテトを多く出して、満腹感を得てもらう。個人のパーティーは狭い会場を借りる工夫もする」と打ち明ける。別の議員は「券が千枚売れても、用意する飲食物は多くて500人分。参加者は怒らないから、みな同じような手段を取る」と居直る。

 見返りは
 そもそも1枚2万円ものパーティー券を買う企業・団体側にはどのようなメリットがあるのか。「22年に岸田文雄首相の政治団体が開催したパーティーの利益率は9割だった。対価なんかないじゃないか」。11月28日の参院予算委員会で、共産党の田村智子政策委員長は首相に迫った。
 「経費の割合は政治資金規正法で定められていない。問題意識があるならば、与野党で不断に議論を行うべきだ」との弁明にとどめた首相。田村氏は「見返りは企業活動の利益だ。パーティーは事実上の企業団体献金と化している」と断じた。
 内閣支持率低迷にあえぐ首相と自民に重くのしかかる派閥マネー問題。自民筋は「国民に分かるように説明できないと、いずれ大きなしっぺ返しを食らうぞ」と警鐘を鳴らした。

塩谷氏「事実か精査」 ノルマ認める閣僚も  自民党安倍派(清和政策研究会)の塩谷立座長(衆院比例東海)は1日、派閥パーティー券の販売ノルマを超えた分を派閥から各議員に還流していたとの疑惑について「事実関係を精査する」と国会内で記者団に語った。複数の閣僚はノルマを認めた一方、事務総長経験者の松野博一官房長官や西村康稔経済産業相は政府の立場を理由にコメントを避けた。
 当選6回の鈴木淳司総務相は記者会見で「目標となる販売枚数を聞いたことはある。支援者にお願いして何とかクリアしている」とし、還流を受けたことはないと説明した。宮下一郎農相は「その時その時で目標額があった」とした上で「(ノルマを)超えて戻すみたいなことはなかった」と話した。
 松野氏は午前と午後の会見で還流の有無や説明責任を問われたが「個々の政治団体の活動に関するお尋ねは、政府の立場として答えは差し控える」と繰り返した。西村氏も回答をそろえた。
 松野、西村両氏を含め安倍派の有力者「5人組」は慎重な対応にとどまる。世耕弘成参院幹事長は会見で「過去も現在も含めて派閥の会計処理に携わったことはない」と述べた。萩生田光一政調会長や現事務総長の高木毅国対委員長は、事実確認を求める記者団の要請に応じていない。
野党 説明責任求める  自民党安倍派がパーティー券のノルマを超えた販売利益を議員側に還流したとされる問題に関し、立憲民主党の泉健太代表は1日の記者会見で「他派閥でも行われたのではないか。説明責任を果たしてもらう」と安倍派以外も含めて厳しくただす姿勢を示した。野党は来週予定される衆参両院の予算委員会集中審議で、岸田文雄首相や派閥幹部を経験した閣僚を追及する構えだ。
 立民の水岡俊一参院議員会長は党会合で「日本政治の大きなうみだ」と言い切った。立民中堅は、自民党5派閥がパーティー収入の過少記載を告発された問題と併せて「予算委の集中審議で首相に聞く」と予告した。共産党の田村智子政策委員長は会見で、裏金づくりを根絶するために政治資金パーティー開催や企業団体献金を全面禁止すべきだと主張。政治資金規正法改正案を国会に提出すると訴えた。
 日本維新の会の馬場伸幸代表は記者団に「政治とカネの問題は、政治に対する国民の信頼を低下させる。政界全体に悪影響が出る」と懸念した。国民民主党の玉木雄一郎代表は「自民党政治そのものが問われている」と指摘した。
 一方、自民党岸田派幹部は「安倍派が責任を持って対応すべきだ」と安倍派の問題だとの認識を語った。公明党の石井啓一幹事長は会見で「各派閥が説明を尽くすことが重要だ」と誠実な対応を促した。

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