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テーマ : 選挙しずおか

行政対応再検証渋る川勝知事 熱海土石流被災者が批判「原因究明、徹底を」 識者からも問題視

 熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流の行政対応検証が不足している問題を巡り、県議会の再検証要請に応じない川勝平太知事に対して、被災者から「原因究明の徹底を」「結論ありきなのか」などと批判の声が上がっている。識者は川勝知事の態度について「妥当ではない」とし、知事の行政執行をチェックする立場の県議会の要請に応じない対応を問題視する。

静岡県議会からの再検証要請に見解を示す川勝平太知事=3月下旬、県庁
静岡県議会からの再検証要請に見解を示す川勝平太知事=3月下旬、県庁
知事が再検証に応じない理由と事実関係の整理
知事が再検証に応じない理由と事実関係の整理
再検証を求める県議会特別委員会の報告書を議長に提出する県議=2月、県庁
再検証を求める県議会特別委員会の報告書を議長に提出する県議=2月、県庁
静岡県議会からの再検証要請に見解を示す川勝平太知事=3月下旬、県庁
知事が再検証に応じない理由と事実関係の整理
再検証を求める県議会特別委員会の報告書を議長に提出する県議=2月、県庁


 「これまでの対応で十分だ」―。川勝知事は県議選告示を直前に控えた3月28日の定例記者会見で、県議会特別委員会の再検証要請に見解を示した。各分野の専門家から検証不足の指摘が相次ぐ中、4月の会見では「実施可能性も含めて精査している」と補足したが、県は行政対応の関係文書を出し渋り、法的責任は否定し続けている。

 背を向ける態度
 遺族や被災者の間には知事への不信感が広がっている。母チヨセさんを亡くした鈴木仁史さん(58)は「発生1年の慰霊式で聞こえのいいことばかり言っていた。しかし、今回は私たちに背を向けるような態度。県には責任がないという結論に持っていきたいだけだと感じる」と受け止める。自宅が半壊し避難生活中の小松こづ江さん(72)は「原因を徹底的に究明しようとせず、資料を公表しないのもおかしい」と落胆。同じく自宅が半壊した関沢浩さん(56)は「守るべき県民が置き去りにされていないか」と憤る。

 政局切り離して
 県議会は会派代表者会議で、各特別委員会のまとめた報告書の内容に関し、県執行部から3年間、年度ごとの取り組み状況の説明を求めると決めている。熱海市選出の藤曲敬宏県議は「再検証は県議会の総意なので、知事は重く受け止めるべきだ」と強調する。
 全国の自治体問題に詳しいNPO法人情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は「問題があるほど行政は組織を守ろうとバイアスがかかる。自治体は二元代表制なので行政をチェックするのが議会。知事がリーダーシップを取って当初の方針を軌道修正すべきではないか」と話す。
 県立大の前山亮吉教授(政治学)は「民意として県議会の意見を知事は尊重しないといけない」とする一方、県議会に対しても「知事不信任決議案の話も出ているが、県議会は政局と切り離して再検証に持っていくべきだ」と注文する。
 (社会部・大橋弘典、熱海支局・豊竹喬)

 <メモ>熱海土石流の行政対応の検証不足 県が設置した行政対応検証委員会は盛り土崩落部と県土採取等規制条例の手続き(権限は市)に検証対象を限定。県は関係文書の公表も部分的にとどめている。県議会特別委員会は検証不足だとして再検証を求める報告書をまとめたが、川勝平太知事は再検証に応じず、理由として①検証すべきものを網羅した②検証委委員から直接、再検証を求められていない③検証不足の部分は独自見解を発表済み―を挙げた。

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