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テーマ : 選挙しずおか

社説(10月13日)札幌30年五輪断念 招致再出発へ民意問え

 札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)が、2030年冬季五輪・パラリンピックの招致断念を表明した。21年東京大会を巡る汚職・談合事件の影響で機運が停滞し、スウェーデンなど他に有力候補都市が出てきたことによるものだ。札幌市は34年大会以降の招致の可能性を探るとしているが、市民の支持が得られているとはいえない。あらためて民意を問い、再出発する必要がある。
 莫大[ばくだい]な公金を投入する五輪招致について、欧米では住民投票を踏まえる例が多くなっている。26年大会では、シオン(スイス)やカルガリー(カナダ)が住民投票で否決され、招致から撤退した。
 札幌市では昨年、五輪開催の是非を問う住民投票実施案を市議会が否決した。それでもなお市民からは、住民投票を求める声が上がっている。秋元克広札幌市長は「しかるべき時期に民意の確認を行う」としている。住民投票や意向調査の結果次第では、招致撤退も検討すべきだ。
 札幌市は、30年の開催地として最有力視されていた。だが、東京大会後に五輪のイメージが悪化し、昨年12月に積極的な機運醸成活動を休止していた。招致の是非が問われた4月の札幌市長選で秋元市長は3選されたが、得票率は約56%で前回選挙の約71%から下げ、招致反対を訴えた2候補に4割超の票が流れた。市民の五輪に対する疑念や不信は明らかで、招致断念は当然ともいえよう。
 北海道新幹線の札幌延伸は予定していた31年春ごろから遅れる見通し。延伸を見越し札幌駅周辺などが再開発されるため、地元経済界からは五輪・パラの34年開催を望む声もある。しかし、34年はソルトレークシティー(米国)が有力視されている。38年大会は決定時期や選考方法などが決まっておらず、先行きは不透明だ。加えて、先送りすればするほど招致費用はかさむ。市民の理解を得ることはさらに難しくなるだろう。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、以前はIOC委員の投票で開催地を決めていたが、今は複数の候補都市の中から理事会で最終候補を一本化し、総会で承認する。30年については、温暖化による気候変動などの対応策の協議が必要として、決定を24年以降に先送りしていた。IOCの「将来開催地委員会」は30年と34年の同時決定や持ち回り開催などの改革案を検討しているとされる。
 同時決定案がIOC理事会で承認されれば、年内にも候補地が絞り込まれ、来夏の総会で30、34年の開催地が正式決定する可能性がある。札幌市が34年の招致を目指すとしても、機運醸成への時間はあまりないといえよう。

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