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テーマ : 政治しずおか

滞る残土処分 ゆがんだ静岡県条例、足かせに【統一地方選 地域課題を考える 記者からの提言㊤】

 谷に不法投棄された残土(盛り土)が崩落し、28人が死亡した熱海土石流。その教訓として作られた静岡県盛り土規制条例が昨年7月に施行された後、皮肉にも県内で適正な残土処分が滞っている。熱海土石流の被害とは関係ない土壌汚染調査が条例で求められるようになり、各地の適正な業者が残土の受け入れを拒んでいる。このままでは残土の不法投棄を助長しかねない。

排水などの管理を徹底した県東部の残土処分場。広大だが、盛り土規制条例の影響で受け入れを制限している=3月上旬
排水などの管理を徹底した県東部の残土処分場。広大だが、盛り土規制条例の影響で受け入れを制限している=3月上旬

 「出所の分からない土砂は怖くて受け入れられないよ」。県東部で残土処分場を運営する担当者がぼやく。広さは東京ドーム1・5倍の約7ヘクタール。周囲に人家のない採石場跡地に造成され、沈砂池を設けるなど管理を徹底し、土石流は発生しない構造だ。
 しかし、条例で義務化された土壌汚染調査が足かせになり、残土の受け入れを制限している。搬入された土砂に調査漏れがあって後から有害物質が見つかれば、受け入れ側の責任。撤去が必要になれば処分場が多額の損害を被るためだと言う。
 事態は深刻だ。各地の処分場で受け入れ拒否が相次ぎ、開発業者が土砂の捨て場所に困る状況は県内全域に広がっている。土壌汚染調査を中心にした、ゆがんだ規制は見直すべきではないか。
 土石流は「大量の土砂」「大量の水」「急勾配が続く地形」がそろうと発生し、急峻(きゅうしゅん)な地形に残土を投棄させないことが再発防止につながる。急斜面の逢初(あいぞめ)川上流域で残土投棄を規制する砂防法を適用しなかった県は、土石流発生後も「法的責任はない」として急斜面の残土投棄の危険性に目を向けてこなかった。
 代わりに、土石流の土砂に微量のフッ素が含まれていたことに着目。条例は土壌汚染対策に力点を置き、その対応に限られた人員を割いた。急斜面への残土投棄の規制強化こそ優先すべきだろう。
 熱海土石流の死者には土壌汚染による犠牲者はいない。県は不法投棄を防ぐ最終処分先確保など、本当に必要な施策に軸足を移してもらいたい。

ここがポイント!
・過度な土壌汚染調査は見直しを
・危険な急斜面への残土規制こそ強化
・残土の最終処分先の確保も同時に

      ◇

 地域の課題を解決するため自治体に何ができるのか。課題の現場を取材した記者が、統一地方選に合わせて考えてみた。

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