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テーマ : 政治しずおか

「強硬」封印 譲歩の首相 公明がブレーキ 自民に不満 次期戦闘機輸出解禁【表層深層】

 次期戦闘機の第三国輸出を巡る与党協議が15日に決着した。岸田文雄首相は当初、共同開発相手の英国やイタリアと対等な立場を求め、輸出解禁を急いだ。しかし自民党派閥の裏金事件が直撃し、政権の体力をそがれる中、強硬路線は封印。「平和の党」を前面に出し、ブレーキ役に徹した公明党に譲歩を重ねた。自民内には国防族を中心に、公明への不満がマグマのように鬱積(うっせき)する。

首相官邸に入る岸田首相=15日午前
首相官邸に入る岸田首相=15日午前
次期戦闘機の第三国輸出を巡る自民、公明両党の動き
次期戦闘機の第三国輸出を巡る自民、公明両党の動き
首相官邸に入る岸田首相=15日午前
次期戦闘機の第三国輸出を巡る自民、公明両党の動き


 風向き変化
 「このようなプロセスを経たことが国民の理解につながった」。15日、国会。自民の渡海紀三朗政調会長は記者団を前に、与党合意に安堵(あんど)の表情を浮かべた。隣に座る公明の高木陽介政調会長も「懸念を受け入れてもらった」と手応えを語った。円満解決を装う両者だが、官邸や自民の一部には「妥協の産物」(閣僚経験者)と映る。
 官邸と自民は元々、次期戦闘機を含め幅広く国際共同開発品を輸出できるようルールを見直す方針だった。昨年7月の自公実務者の論点整理では、輸出を認める意見が大勢と明記。首相周辺は「合意は遠くない」と踏んでいた。
 だが政府への提言取りまとめを目前にした11月15日、公明の創設者である池田大作創価学会名誉会長が死去し、風向きが変わる。高木氏ら公明幹部がそろって「慎重に議論するべきだ」と主張し始めたのだ。前後して表面化した裏金事件の対応に自民は追われ、与党協議は停滞した。

 連立解消論
 「連立にひびが入っても輸出を認めるべきだ」「国益のために反対論は押し切ればいい」。今年1月末に開かれた自民の会合では、とうとう連立解消論が飛び出した。
 輸出解禁を早く実現したい官邸や自民の中では焦りばかりが募っていった。公明を納得させるにはどうしたらいいのか-。
 「お手上げ状態」(政府関係者)の自民実務者にいら立つ官邸は、国家安全保障局と防衛省に理論武装を図るよう指示。協議の場を政調会長に移行し、首相が国会で第三国輸出の必要性を丁寧に説明することで、妥協点を見いだしていく戦略にかじを切った。
 2月13日、首相は公明の山口那津男代表と官邸で会談し、すり寄る。「国民の理解を得られるように協議したい」

 満額回答
 とはいえ公明を解きほぐす答弁には首相も頭を抱えた。
 2月の衆院予算委員会では「国際共同生産の規模が大きくなるほど調達価格の低下につながる」と訴えたが、公明からは「コスト削減を売りにするのは控えてほしい」と注文が付いた。首相は周囲に「これも言ったら駄目なのか」とうなった。
 3月に入り、首相は参院予算委で公明幹部の質問に答える形で、第三国輸出を巡る歯止め策を次々披露。共同通信の世論調査で、第三国輸出に関し「同盟国や友好国などに限定して認めるべきだ」との回答が48・1%だったことも公明の態度軟化を後押しした。
 2月の自公党首会談から1カ月でこぎ着けた決着。結果的に歯止め策の要求を丸のみさせた公明幹部は「ほぼ満額回答だ」と、ほくそ笑む。
 対する自民。15日の党会合では「時間のロスだ。やはり連立を解消すべきだ」と強硬論が再燃した。国防族の一人は痛烈に皮肉る。「形式を重んじる公明の存在こそが最大の歯止めだな」

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